表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/17

JAX⭕️ 見学会 10

とある家族の女子高生 と AI

宇宙ステーションの日常を描いた物語

「では、ご説明します。簡単に――」


エレナが後部座席でスッと姿勢を正しながら話し始めた。


「この車のコンピューターを入れ替えました。そして、面白いことにこの車には通常とは異なる“切り替えモード”が存在していました」


「切り替え?」


「ああこの左側の通常 eco スポーツに切り替わるやつだね」


「はい。たとえば、“eco”は電気走行に変更。“スポーツ”はそのまま加速重視の走行モードです。“universe”モードは……今後長くなるので現在は開発中です」


「なんかすごそうだな(笑)」


「さらに、パスワードを入力すれば“通常”のように見せかけて、車検にもそのまま通る設計にしました。ecoモードではモーター出力を上げ、小さな融合炉を搭載しております」


「え、融合炉!?」


「はい。心臓ほどのサイズの融合炉発電機レベルです」


「マジか……すごい電気自動車みたいじゃん!」


「乗って確認しましょう」



そして、高校に到着。校門の前で父に撮ってもらいながら、エレナと記念写真をパシャリ。

そのタイミングで先生が校舎から現れる。


挿絵(By みてみん)


「あら、妹さん?」


「そうです、妹です」


「あらまぁ、かわいらしい〜」


後輩たちも「わー!」と集まってきて、にぎやかな雰囲気に。


理科部の部室を見せたあと、校内を一周。

見学の最後、先生が声をかけてくる。


「ぜひ来年はうちの学校に来てね〜。今度お母さんと一緒に説明会にも来てちょうだい」


「はーい、考えてみます」


その後、出発の準備に入る。


「さあ、行きますよ〜。こっちはあと2人乗れるよー!」


「先生の車は4人ねー!」


「えー、部長のところがいいー!」


「じゃあ、じゃんけんだね!」


「だって、エレナちゃんと話したいし!」


一年女子たちの熾烈なじゃんけんバトルが始まり……


「やったーーー!」


歓喜する2人と、落ち込む他の子たち。


「あーあー、先生のところかぁ……」


「ちょっと、何よ! 先生だってそっち乗りたいわよ!」


みんなで笑いながら、車に乗り込む。



「では、出発しまーす」


車内は和やかな雰囲気。

「ねえねえ、エレナちゃん来年うちに入るの〜? 後輩ちゃんになるの?」


「ええ、そうなったら嬉しいです。頑張ります!」


わいわいしながら走る車内。父は内心――


(……すげえな。モーター、高速でも滑らかで加速が鋭い……こりゃすごい)



そして、相模原JAX⭕️に到着。


挿絵(By みてみん)


「エレナちゃん、ずっとお姉さんと手つないでるね〜」


「私もつなぎたーい!」


両手を後輩たちに譲って、ゆきなは嬉しそうに笑っていた。


正門に着くと、すでに数名の出迎えが立っていた。


「⭕️⭕️女子高校、理科部部長です。本日はお招きいただきありがとうございます!」


しっかりとお辞儀。

「みんなも、ほら!」


メンバーはお揃いのワンピースをそっと手を添えておしとやかに、丁寧にお辞儀。


挿絵(By みてみん)


先生は少し出遅れ気味にあたふたとお辞儀する。


「いえいえ、こちらこそ。発表、とても良かったですよ! ぜひ意見交換もしたいですね」



見学が始まり、まずは通常の見学ルートへ。

そのあと研究棟に移動し、月のサンプルの説明が行われる。


「では、こちらが月の石です」


「わぁ〜!」

歓声があがる。


「触れることはできませんが、こちらがレゴリスです」


その時、私はふと質問をした。


「このレゴリスから、どれくらいのヘリウム3が採取できたんですか?」


職員の人がハッとしたようにこちらを見て、真剣な顔で答える。


「……感知はできる程度でした。ですが、地球に運んでくる途中で、ほとんどが抜けてしまいました」


「なるほど。本当に貴重なんですね」


「ご興味が?」


「はい。祖父の研究が、先日の発表のもとにもなっているので」


職員は「なるほど」と頷きながら、じっと私を見ていた――。


その後、見学はさらに深まり、

宇宙エンジンの仕組みや火星への航行計画、宇宙ステーションの研究成果まで、たっぷりと説明を受けた。

展示資料や実物模型、研究員の方々の話す熱意に、理科部の一同も興味津々だった。


「お昼は食堂をご自由にどうぞ」と案内され、全員でのんびりランチタイムに。

カレー、定食、サンドイッチ…思い思いのメニューを手に、グループに分かれてテーブルに着く。


そのとき──


「部長さん、お隣よろしいですか?」


声をかけてきたのは、先ほどの説明にもいたJAX⭕️の職員だった。


「感想をまとめたレポートを書いた佐々木と申します。今回のご来訪、ありがとうございます。」


「こちらこそ光栄です、興味はすごくある部員がおおいので」


と、部長はやわらかく応じる。


「祖父が、ヘリウム変化の研究をしていたらしくて、それを理解したくて…お勉強しただけなんです」


と照れたように話すと、佐々木さんはうなずいて微笑んだ。


「……あの、食後に少しだけ、お時間いただけますか?」


ぽろっと、佐々木さんが真剣な表情を見せる。


挿絵(By みてみん)


「ええ、いいですよ。話を聞きましょう」


「みんなー、ご飯食べたら13:30まで休憩ねー」


と声をかけて、部長はそっと立ち上がる。


(エレナ、一緒に来る?)


(いえ、時計で聞こえてますので、先輩方と一緒にいます)


(了解)


「お父さんー」


「おっ、今行くー!」


元気な返事と共に、父も加わる。


案内されたのは、音漏れ対策の施された個室。

エレナの画面に「周囲に盗聴などはございません」と表示される。


「どうぞ、おかけください」


佐々木さんの言葉に従い、ソファに腰を下ろす。


「実は……お見せしたいものがあります」


鞄から取り出したのは、一枚の設計図のような紙。


「……これは?」


「少々、拝見いたします」


目を通すと、思わず息をのんだ。


「……まさか、こんな単純な方法で……時間はかかるけど、ヘリウム4からヘリウム3を製造する方法ですか?」


「はい。祖父の研究で、倉庫の装置で70年かけて完成していたようです」


「現在、特許申請中です」と続けながら、ゆきなは小さなガス缶を取り出した。


「これは……ヘリウム3、ですと?」


「精製中のものが残っていて、この一本がそれです。

鑑定・調査をお願いしたいのです。結果は、JAX〇で正式に証明書として出していただけると助かります」


佐々木さんが驚いた顔でこちらを見る。


「もしも、本物と証明されるなら……この一本、差し上げます」


「これは……いただいても?」


「はい、試験用としてなら構いません。

ただし、本物と証明された場合には、その鑑定書をご提示いただいた上で交渉をさせてください。

祖父の研究が正しいなら、国の力で効率化し、研究用としての製造も不可能ではないはずです」


部屋が静まり返る中、佐々木さんは深く頭を下げた。


1週間10話目・・・本当は3日に1回予定なんですが…

ブックマーク評価感想をおねがいします・・

あしたも・・・頑張れるかもしれない・・えっ・・あしたも・・がんばりますかも・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ