VS確定申告
SNSでは定期的に、先輩作家による確定申告への注意喚起が流れてくる。
2024年に商業デビューした作者(以後C)も、忘れずに開業届と青色申請書を提出した。
このC。もう何年も社会人をやっている年齢だけは立派な大人なのだが、専門知識のおかげで何とか食いっぱぐれていないだけの情弱。
今まで控除の対象になるような行為は、ふるさと納税くらい。
しかも毎年ではなく何年かに1回レベルなので、普段は会社が用意した見本通りに、年末調整の書類を提出して終了。
こんなCだったが、運良く本を出すことになり事業所得の申請をするに至る。
しかも同じ年に家を買ったせいで、所得税の方でも住宅ローン控除を申請することになるという人生初のダブルパンチ。
ガイド通りにボタンを押すだけのチュートリアルしか経験がないのに、いきなりマルチバトルに飛び込むようなものである。
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「白色は簡単だが、青色の方が税負担を軽くできる」その一点だけで、青色申告を選んだC。
オンラインタイプの会計ソフトを導入し、作家業関連の収支があれば都度入力。
カテゴリが微妙にわからないのがあっても、なんとなくで判断して登録。
カクヨムのロイヤリティプログラムでAmazonギフト券交換したけど、これって収入に入るの?
わからないけど、脱税扱いされたくないから入力しとくか――と、こんな次第。
(※確定申告会場のスタッフに確認したところ、Amazonギフト券への交換は収入扱い)
2024年は1社でしか刊行していないこともあり、収入の入力は超シンプル。
支出もお中元お歳暮と、執筆用に機材を購入しただけ。これまた数行で終わり。
なおインターネットや、参考文献の購入は申告せず。
インターネットの方は、プライベートの割合とか面倒なことになりそうなので割愛。参考文献も電書で領収書が出せなかったので同じく。
ギリギリになって慌てないように、事前に帳簿付け&領収書を揃えた状態に。
会計ソフトの誘導通りに事業所得を入力し終わり、所得税に進んだときに悲劇は起きた――!
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Cは去年友人宅に遊びに行き「マイホームいいなー」と思い、2週間後にマイホームを購入した。
ちなみに以前から検討していたとか、調べていたなんてことはない。
「いいなー」と思った次の休日に、住まい探しのカウンターに行き、今まで住んだ中で一番気に入った土地で物件をピックアップ。
検索結果の説明時に見学の予約をいれてもらい、そのまた次の休日に行ってその場で決めた。
家購入のために行動したのは、実質2日である。
半ば冷やかしというか、「家欲しいわ」という衝動を宥めるための見学ツアー。
必要に迫られているわけではないので、グッとくる家がなければ家探しそのものを終了するつもりだったが即日契約。
購入の決め手は「ここでの生活がリアルに想像できて、その時にワクワクした」「何年先だろうと今後の家探しは、この物件を基準にするんだろうなと思った」から。
フッ軽というか頭が軽い。
元利均等返済と元金均等返済も知らなかったレベルなので、住宅ローン控除なるものも、とりあえず購入した物件が対象になることしか知らず。
ネットを読みあさって、必要そうな書類を取りそろえていざ入力。
と思ったら、画面には「計算明細書に記入して計算し、その結果を入力してください。計算書は外部サイトに飛んで印刷するか、税務署でもらってください」という非情な文言が。
え?
今までのように、言われた数字を入れたらできあがる仕様じゃないの?
国税庁のサイトって、どの書類を印刷するか探そうにも、長文タイトル小説を超えるシロモノが並んでて目が滑るんだけど。
そもそも会計ソフト君。君は無料ソフトじゃないのに、これってどうよ。
難しい手続きを簡単にするのが君のウリじゃないのか?
こちとら右も左もわからない猿以下なんだぞ。検索してもよくわかんないんだわ。
――結果。Cは自力で最後までやることを諦め、税務署の相談窓口を予約した。
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税務署の予約も、正直ややこしかった。
近所の税務署を検索し、そこのHPに記載されていた番号に電話したが「LINEで予約してくれ」と。
え。
税務署での相談は事前に電話予約しろと書いておいて、確定申告はLINE経由のみ?
ならそう書いてくれよ!
そして予約日。
必要そうな書類を全部抱えて行ったら「確定申告なら近所に会場があるからそっちへ行ってくれ。その場で提出できるから」と、当日券を手渡される。
聞きたいのは計算明細書の書き方――というか、ソフトに入力する数字だけだったのだが、そっちの方が効率的なんだろうなと大人しく移動。
車で数分の距離にある会場は、臨時のブースがならび、蛍光色のジャンパーを着たスタッフが申請者を補助していた。
(思ってたのと違う展開だけど、最後までやってくれるらしいし、目的達成できれば良いか)と並ぶC。
完全なフラグ。
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Cのネット環境は物件付帯のWiFiのみ。
外でPC使うなら、飛んでるWiFiを拾うか、スマホでインターネット共有。
だが会場はノーWiFi、スマホも電波ギリギリ。
ブラウザにログインするタイプの会計ソフトだったので、スマホから入ればよかったのだが、そこまで頭が回らず。
スタッフがサクサク計算してくれたので、もうe-Taxで提出すればいいやとなる。
幸いにも領収書も全て持参していたので、スマホにポチポチして事業所得を入力。
今までの帳簿づけが無になった瞬間である。
ソフトに記録した帳簿を提出すれば上の額で特別控除できたが、今回は大した額ではないのであまり変わらないだろうと判断。青色にした意味よ。
次に計算で詰んでた所得税もポチポチ。
おっと年末調整し忘れていた生命保険があったわ。
あ。間違えて古い書類持ってきてら。
みんな! 証明書の類いは、ちゃんと今年度のものか確認しようね!
最後まで進んだところで「提出先が違う。住所間違えてる」と、戻ってきたベテランスタッフに指摘される。
住宅ローン控除は自宅を対象としたものなので、提出先は自宅がある地域の税務署。当然だよね。
でもCは仕事で遠方に仮住まい中。さっさと終わらせたくて、直ぐ側にある税務署に提出してぇなとそっちの住所を入力していた。
はい一からやり直し!
データ保存していたので、人生2周目状態でやり直せたのが不幸中の幸い。
ベテランスタッフが指摘してくれなきゃ終わってた。
そのベテランは、取り下げの書類もサクサク作ってくれた。
源泉所得税が入力されていないことをスタッフに指摘され、入力する。
えー。一回目に入力したときに、こんな項目あった?
控除予定額が変わる。
通知系は全部電子希望にしていたが、「不備があった場合の通知は書面の方が楽」だとスタッフに教えてもらう。
やはりベテラン。さすがベテラン。こういう手続き系は人間しか勝たん!
データ引用して住所だけ訂正すれば良い話だったのに、気がついたら通しで修正するはめになっていた。
全部終えた頃には、会場入りしてから2時間が経過。
あんなに利用者で賑わっていた会場がすっからかん。
そうです、私がラストです。脳内で蛍の光が流れる。
ありがとうございます、ありがとうございます。すみません……とペコペコしながら会場を後にする。
なんだかんだ入れ替わり立ち替わり、色んなスタッフのお世話になった。
確定申告は期間内であれば再送信したら、自動的に新しいものが受理されるらしい。
家に帰って生命保険を入れ直す。
ちなみに会計ソフトでやり直せるんじゃないかと思ったが、会場で入力した画面とソフトの入力画面が違いすぎてそっ閉じ。
となるとPCサイトにスマホからログインして、再びあの会場で再提出……(白目)。
試しに確認したら、画面崩れが酷くてとてもじゃないが操作できない!
危ない危ない、事前に確認しておいて良かった――クソが!!!!
大手ソフトで無料期間が長いのが魅力だったけど、使いにくいこと山のごとしだったので、もうひとつのソフトに乗り換え。
そちらはアプリからでも簡単に記帳できるし、確定申告も○×答えていく形式だったので楽ちん。
口座連携したら自動で反映されるのは凄いが、源泉所得の入力だけ難解で手間取った。しかし本当にそれくらいしか困ることがなかった。
鬼門・住宅ローン控除の計算も「この書類見て」「この数字を掛けて割って」と小学校の先生のような優しさ。
でもできあがった計算明細書は、会場で作ったのと少し数値が違ったので修正。「家の代金」が「建物だけ」なのか、建物+土地の「支払合計」なのか、その表記じゃ間違える人いるでしょ。私とか。
照合できたという点では、先日の2時間は無駄ではなかった!
アプリで提出したが別途、年末残高等証明書や不動産売買契約書などの書類を提出しなければいけない。
提出手段はPDFにして送信か、管轄の税務署に現物を郵送か直接持ち込む。
Cは郵送を選んだ。本当は持ち込んでその場でチェックしてもらいたかったけど、予約とか必要なんでしょ。
最後にLINEで国税局からアンケートの要請が。
来年度について聞かれ、死んだ魚の目で「税理士に任せる予定」を選択。
税理士に頼むくらい稼ぎたいけど、無理だろうな。
初年度以降はネックだった住宅ローンが年末調整で処理できるっぽいので、今回よりはマシだと信じたい。