負け犬人生の翔平、アクマと契約する
「じゃあオレには何のメリットがあるんだ?」
「さあどうでしょう、とりあえず警察に捕まらずに済みますが、80才まで生きられるのに、30才前に亡くなるのは、翔平さんにはデメリットですもんね」
「いや、そんな事はない」
「そうですか? 長生きしたくないですか?」
「したくないね」
と翔平はキッパリ言いました。
「もう亡くなったオレの祖父が介護が必要だったんだけど、その介護をしていた母親が苦労していたし、そのせいで両親は不仲になったし、そういうのを見てきたからオレは若いうちに死にたいんだ」
「あら、うれしい! コチラとしては好都合ですね。でも30才前に亡くなるのは早すぎると思いませんか? 60才ぐらいで亡くなるプランに変更してもいいんですけど? それでもコチラとしては20年間の寿命が手に入りますし」
「いや30才前でいいよ。この日本って国は、18才で高卒なのか、どの大学に入るのかでその後の将来が決まってしまう。だから『18才身分制度』って言う人がいるぐらいだ。その学歴社会で負け犬だった人間も芸能やスポーツや商売の才能があって成り上がることはある。でも大半の人間は30才前にはそんな才能もないことを知るんだ。だからそれ以上生きたって負け犬人生が続くだけだ。オレはそんな人生を長々と続ける気はない。30才前に亡くなるプランでいいよ」
と生命保険の契約のように、翔平は言いました。
「じゃあ翔平さんも同意ということで、契約は成立したと考えてよろしいでしょうか?」
「ああ、かまわないよ。今オレは酔っぱらいかけている。目の前のアクマの女の子が、酔っぱらいが見た夢でもかまわない。こんなミジメな人生から逃げられるなら、アクマと契約でもしてやるさ」
「ありがとうございます。サービスとして、亡くなる時は心臓発作で苦しまず死ねるというのを、オプションで付けさせていただきます」
とアンナも、生命保険の外交員のように答えるのでした。
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