翔平の寿命を手に入れたアクマ、資産家になる
「でもこれは横取りされずに済んだわ」
着ぐるみの腰のあたりに付いてあるポケットから、ゴルフボールぐらいの銀色の球体が次々と飛び出してくると、空中にフワフワと浮かんでいます。これまでアンナが手に入れた50年分の寿命が、10個ぐらい浮かんでいたのです。合計で500年分ぐらいはある貴重な寿命です。
「天使の奴がこう言ったのを私は聞き逃さなかったわ! 『高貴なる大谷翔平の魂は、天使の保護下に入ることになった』って!」
それは人間の世界で例えれば、それまで無名だった画家が、有名な展覧会で受賞し、一躍知名度が上がり、作品の評価が高まったことと同じ意味をしているのでした。天使のお墨付きをもらった翔平の魂は、価値を跳ね上げたのです。それは、アンナが手にしている翔平の寿命の価値も跳ね上げたのでした。アンナはアクマの世界ではまだ子供ですが、このことによって、大人のアクマの中でも通用するほどの資産家になったのです。
「ヤッター! 想像していた以上の大成功だわ! 私のお尻をぶったことには腹が立つけど、天使のおかげで資産家になれたんだから、今回だけは許してあげるわ!」
今回の成功体験で、アンナの夢は途方もなく膨らむのでした。
「天使の保護下に入るほどの高貴な魂を持つ人間を、どんどん私は育ててみせるわ! ひとつのスポーツに過ぎないスーパースターの寿命でこれだけ価値があるんだったら、出来損ないの世の中の仕組みを変えるスーパースターの寿命にはどれだけの価値があるんだろう? そんなスーパースターが現れて、子供たちや大人たちがもっと豊かになって、もっと笑顔で暮らせる世界が作られたら、きっとその先には世界中の餓死者や戦死者をゼロにする人類レベルのスーパースターも現れるわ! そんな偉大な魂を持つ人間の寿命を手に入れたら、私はアクマ界でもトップクラスの大富豪になれるわ!」
そんな輝かしい未来を想像して、エッヘンと胸を反らしたいぐらいアンナは誇らしげです。
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