捕まりたくない翔平、アクマの提案を聞く
頭が混乱してきた翔平にはおかまいなく、アンナは話を続けます。
「翔平さん、あなたは早ければ数時間以内、遅くとも数日以内に警察に捕まりますが、それでもかまいませんか?」
「しょうがないだろう、自業自得だ。とうとうオレも前科者だ」
やけくそな口調で、翔平は答えました。
「どうでしょう、私が用意するタイムループの世界に逃げ込んでみては? そうすれば警察に捕まらずに済みますけど」
「本当か? 本当に捕まらないのか? ところでタイムループって何だ?」
「私が用意するタイムループは、同じご両親の間に、同じ年月日で生まれ直し、30才になる前の29才のうちに亡くなる、という時間経過をループする、つまり繰り返すわけです」
「それじゃあ同じ人生を繰り返すだけじゃないか。コンビニ強盗するケチな人生を繰り返すなんてゴメンだね」
「土台となる日本のシステムは変わりませんが、翔平さんを取り巻く環境が違うので、まったく別の人生を歩みます。今よりもはるかに良い人生を歩むかもしれないし、その逆もあるわけです。どちらになるかは賭けです」
「なんで30才になる前に死ななきゃならないんだ?」
「80才まで生きられるのに、30才になる前に死んでしまう。その差50年間の寿命が、アクマである私の報酬なんです。人間の寿命は、アクマの世界ではとても貴重なものです。人間界の貨幣のようなものです。翔平さんがタイムループする度に、自動的に50年間の寿命が手に入るので、私にとってはとてもメリットがあるんです」
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