ミジメな翔平、再びアクマと契約する
「それでは契約成立ということで。翔平さん、お手数ですけど、上着をめくって右腕の手首を見せてもらえませんか」
翔平は言われた通りにし、素肌をさらした手首をアンナの方に差し出しました。アンナがその手首を軽く掴むと、熱湯をかけられたような熱さが手首に襲ってきます。
「熱っ! 何するんだ!」
びっくりした翔平はアンナを睨みつけ、自分の手首を見つめます。本当に熱湯をかけられたような赤味があり、獣の数字である666の模様が、ミミズばれのようになっています。
「その数字がアクマの刻印です。熱さも刻印もすぐに消えます」
たしかに言われた通り、赤味もミミズばれも手首から消えました。
「これで私との契約は完了しました。翔平さん、今の人生はもうすぐ終わります。大好きなお酒でも飲んで、最期の時をお迎えください。それでは私はこれで失礼します。契約して頂きありがとうございました」
アンナは、ペコリと礼儀正しく頭を下げるのでした。小学5年生ぐらいの女の子が、リビングから立ち去っていき姿が見えなくなると、やがて玄関のドアを開ける音がして外に出ていきました。
一人ソファに残された翔平は、アンナが去った方向をしばらく見つめていましたが、すぐに気を取り直してツマミを頬ばり、お酒を流しこみました。酔いが回ってソファに横たわり、そのまま気分良く眠りに落ちました。寝息を立ててしばらくすると、以前した契約通り心臓発作が起こり、苦しまずに死ねたのでした。死んだ翔平の体から、ゴルフボールぐらいの銀色の球体が、浮かび上がり飛んでいきます。その球体は、夜道を歩いていたアンナの前で宙ぶらりんのまま止まりました。立ち止まったアンナが嬉しそうに球体を掴むと、着ぐるみの腰の辺りに付いているポケットの中にしまいます。
「これが最後となる50年分の寿命だわ! そして次は魂まで手に入る! 我ながらよくやったわ!」
エッヘンと胸を反らしたいぐらいアンナは誇らしげです。そのアンナの姿は徐々に霞んでいき、とうとう消えてしまいました。時間と空間を自由に移動できる能力がアクマにはあるので、アンナは最後の人生を歩んだ翔平に会いにいったのでした。
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