最悪を味わった翔平、人並みを望む
「その通りです。翔平さんの寿命を私がいただくかわりに、翔平さんは同じご両親の間に、同じ年月日で生まれ直して、30才になる前の29才で亡くなるという契約を私と結んだのです。ですので、今の人生を歩んでいる翔平さんももうすぐ亡くなります」
「死ぬのか、オレ?」
「はい、怖いですか?」
「いや、ホッとしている。こんな苦しい人生早く終わりにしたいぐらいだ」
「それは良かった。このままだと生まれ直しても、今よりもはるかに良い人生を歩むかもしれないし、その逆もあるわけです。どちらになるかは賭けです」
「今よりもミジメな人生なんて耐えられないな」
「ですので先ほど口にしていたように、魂を売ってくださるなら、お望み通りの人生を歩めますよ」
「お望み通り?」
「はい、魂を売ると2度と生まれ直せないかわりに、お望みの人生を送れます。最後の人生なので、これまで生まれ直してきた人生の体験も、すべて思い出しながら生きていくことも出来ます。翔平さんはどんな人生をお望みですか?」
「家族全員が健康ならそれでいい。父も、母も、兄も、姉も、オレも、元気ならそれでいい。あとは何もいらない」
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