2人暮らしになった翔平、母が「騒音おばさん」と呼ばれていることを知る
悲劇はそれで終わりませんでした。母の様子がおかしくなり始めたのです。重い病気だった3人が亡くなり、長年の介護から解放された母でしたが、買い物で外出する以外は家に引きこもりがちでした。
お経が録音されたCDを、ラジカセからよく聴くようになりました。
「大谷家は悪い霊に呪われているの。だから家族が病気にかかって死んでしまったの。でもお経さえかけていれば大丈夫。翔平を悪い霊から守ってくれるわ」
とよく母は話していました。おかしな事だと思っていましたが、自分の身を案じてくれている母親に強く反対することも出来ないのでした。
でもそうもいかない状況に発展していきました。ラジカセの音量がしだいに大きくなり、注意する翔平が仕事でいない日中、その大音量のせいで近所とトラブルを起こしていたのです。仕事から帰ってきた翔平が、自宅まで抗議にきた近所の人に謝罪している時も、当の母親は謝りもせず、「お前らは悪い霊の手先だ! この家から早く出ていけ!」と鬼の形相で罵るのでした。
大谷家の不幸は、悪い霊の仕業だと信じきっている母親は、この日を境に、近所の人を完全に敵だと決めつけたのでした。それからはラジカセから流れるお経の音量をさらに大きくし、2階のベランダで干している洗濯物を取り込む時に、「引っ越せ! 引っ越せ! 悪霊くたばれ!」と近所の人に向かって怒鳴り続けるのでした。連日続くこの異常行動を近所の1人が携帯で撮影し、SNSにあげたのです。それは瞬く間に拡散し、SNS上では「騒音おばさん」と、母親は名づけられたのです。
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