一斉指導をしている翔平、貧困の連鎖を生みだしていることを知る
小学校の教師をしている友人に、その事の苦情を言ったことがありますが、文部科学省が決めた学習指導要領どおりに授業を進めないと、厳しく叱られるのでしょうがないのだ、と返答されました。友人も、小学生のうちに勉強でつまづいた生徒が、その後、中学生高校生となっていく中でどれだけつらい思いをするのかは理解していますが、一教師の立場で文科省が決めたことに逆らうことなど出来ないのです。欧米では認められている教師のストライキが、日本では法律によって禁じられているため、文科省は愚策のやりたい放題なのです。
学習指導要領は、日本中のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるように作られたカリキュラムでありますが、勉強が苦手な生徒にとっては、日本中のどの地域で教育を受けても、必ず落ちこぼれ、見捨てられ、自尊心を傷つけられ続けるという面があるのです。
元々勉強が得意だったり、授業が分からなくなっても塾で遅れを取り戻せる生徒にとって、小学校中学校高校の12年間は、3匹の子豚のレンガで建てた家のように、学力が確実に積み重なって、大学受験を迎えることが出来るのです。学習障害などで勉強が苦手だったり、授業が分からなくなっても塾に通えないので、遅れたまま教室で見捨てられた生徒にとって、小学校中学校高校の12年間は、3匹の子豚のわらで建てた家のように、学力は積み重なることなく、小学校や中学校のはじめの方で止まったままなのです。高校を卒業して誰でも入れる底辺大学に入学しても、低い賃金のところでしか働けません。簡単な計算も出来ないほど学力のない生徒の場合、働き続けることも出来ずにクビになります。
翔平は、貧困の親から貧困の子供が生まれる連鎖の原因を、学校が生みだしている罪深さに恐怖するのでした。そしてそれは文科省や教育委員会だけでなく、その方針に黙って従っている教師である自身も、加害者の一人なのだという後ろめたさでもありました。
《参考文献「進路格差」(朝比奈なを)、「ケーキの切れない非行少年たち」(宮口幸治)》
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