底辺高校勤務の翔平、小学生レベルの授業をおこなう
自分の席に着き、教科書やノートを出して待ちかまえている生徒相手に、スムーズに授業が始まるのが進学校です。底辺校ではこうはいきません。着席して教科書やノートまで出している生徒は少数で、携帯をいじり、雑誌を読み、化粧をしている生徒がいます。廊下でたむろし、教室内で車座になって、雑談で盛り上がっている生徒たちを注意して着席させます。ようやく授業を始め、数学を教えている翔平は、小学生レベルの算数問題のプリント学習をさせるのです。圧倒的多数の生徒が小・中学校レベルの勉強が分からないからです。
小学生レベルの筆算を繰り返しやらせ、100マス計算をさせたりします。プリントが終わり、採点する時は出来るだけ褒めてやり、スタンプやシールで評価してやる気を促すのです。英語ではアルファベットが書けない生徒もいて、「b」と「d」の区別がつかない生徒も多くいます。曜日や月を英語で書けるように担当教師も努力しますが、高校3年生になっても、同じレベルの試験問題を出し続けているのです。「私は」を「私わ」、「自転車を」を「自転車お」と書く生徒がいるぐらいです。
これだけ教師が譲歩しているのに、その努力が報われることはありません。生徒たちは20分ほどで授業に集中できなくなり、自分勝手に私語を始めたり、眠ったり、立ち上がって教室を出ていくからです。勉強する気がそもそもないのでした。小学校中学校の9年間で、授業が分からない生徒を見捨て続けたツケを、底辺高校の教師が払わされているのです。
《参考文献「置き去りにされた高校生たち」(朝比奈なを)》
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