失業中の翔平、分断された日本の未来を見る
失業手当をもらいながら、ハローワークに通い求人サイトも見ていますが、30前の年齢のせいで、以前より厳しくなった気がします。自宅でテレビを見ていると、ニュース番組の中で、女子アナウンサーが原稿を読んでいます。女子アナウンサーはとても人気のある職業ですが、翔平と同じような高卒の女の子だと、どんなに容姿端麗で滑舌が良くても、なることはできないでしょう。でもテレビで仕事内容を見ている限り、高卒でも充分できるはずです。差別はよくないと社会正義を自認しているテレビ局自体が、仕事に必要ない学力で差別をおこなっているのです。高卒を理由に、色々な会社から門前払いを経験してきた翔平は、不愉快な気分になりました。
ニュース番組は、アメリカのドナルド・トランプ氏を映していました。翔平は、トランプ氏のような傍若無人な人物は嫌いです。しかし支持している人達が、これまでアメリカで無視されてきた白人で高卒の労働者階級であることを知ると、日本でもトランプ現象が起きてもおかしくないな、と思うのでした。金持ちや大企業や一流大学出身者のような支配者層、既得権益層が得するように出来ていて、そうじゃない人間は機会も奪われ差別されている日本。でも人数なら圧倒的に差別されている社会的弱者の方が多いはずです。景気の調整弁として安く使われ、解雇され、踏みにじられている人々に「下を向いて泣いてるんじゃない! 顔を上げて奴等にやり返せ!」と怒りの導火線に火をつけ、それを結集できるカリスマが日本にも現れたら、その人のために投票したいと、翔平は強く思いました。
そしてある日、アクマとの契約通り、心臓発作で亡くなりました。
《参考文献「寿町のひとびと」(山田清機)》
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