いじめられ損の翔平、母親が戦ってくれる
他人を支配したいという権力欲を、不良生徒は翔平を見せしめにいじめることで、満たしたのでした。傷害罪、暴行罪、名誉棄損、脅迫罪などの被害者である翔平は、警察がいればすぐに守ってもらえて、加害者生徒は逮捕され、ケガをした事に対する慰謝料も請求できたでしょう。学校に警察が常駐していれば、いじめという躓きはなくなるのです。面倒くさいからそれをしない教育関係者は、都合の悪い躓きを隠してしまうのでした。意地汚い身の保身です。
躓いた翔平のような子供たちには、終わらない夜が始まって、太陽のない世界を歩かされるのです。いつも明るかった翔平から、笑顔が消え、体中に暴行によるアザを発見した母親が問い詰めたので、ようやく翔平はいじめられた事を告白したのでした。怒った母親が学校に抗議の電話を入れ、そのまま翔平を連れて、放課後の学校に乗り込んだのです。
教室で担任の教師と三者面談をし、いじめられてつらいので、もう学校には来たくないと翔平は伝えました。これまでに一度担任に相談しましたが、プロレスごっこをしているだけ、という加害者生徒の言い分を信じて、何もしてきませんでした。
「そんなにつらいなら無理に学校に通わなくていいんだよ」
30代のメガネをかけた男性教師は、優しくそう言いました。その的外れな発言に母親がキレました。
「いえそうじゃなくて、いじめていた加害者生徒が学校に来ないようにして翔平の身を守ってくださいよ。そうすれば翔平が学校に通えるんですよ」
そう言われ、担任の優しそうな顔が凍りつきました。
「傷害罪で加害者生徒を逮捕してください」
母親の要求に「プロレスごっこだと言ってますしねえ」と、慌てだすのです。
「じゃあ学校に防犯カメラをつけてください。教室で行われている犯罪行為が録画されれば、それが証拠となって逮捕できますし、親から預かっている生徒の安全を守る気があるなら、設置できますよね!」
と問い詰められてもシドロモドロです。
こりゃダメだ。教師ら頼りにならない、信用できない。一般社会が当たり前にしている防犯カメラや警察への通報をする気がないのだ。翔平はつくづく呆れ果てました。それは母親も同様だったようで、
「もう結構です! 身の安全が保障されていない学校なんかに、大切な息子を預けることはできません! 明日から翔平は学校を休ませてもらいます!」
とタンカを切って、翔平を連れて家に戻りました。普段温厚な母親が、自分のために戦ってくれたのが、翔平にはとても嬉しいのでした。
《参考文献「いじめの構造」(内藤朝雄)、「いじめ加害者にどう対応するか」(斉藤環・内田良)、「こども六法」(山崎聡一郎)》
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