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両手いっぱいに百合の花束  作者: 兼定 吉行
第一章 春の嵐
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第8話 ボーイッシュ下ネタOKサバサバ美少女JKとか反則だろ

 昼休み。


 入学当初、ぼっち飯を覚悟していた一朗だったが、昼になっても自然な流れでやって来る黒戸と、いつしか共に食べる形に落ち着いていた。


 最初はぼっちを回避できたと喜んだ一朗だったが――。


 未だ俺に女友達どころか男友達すらできないのは……。


 雪野とは違い、どこかミステリアスな、他人を寄せ付けない雰囲気を持っている黒戸。


 クラスメイトが一切俺に寄り付こうとしないのは、多分……というか、確実にこいつが絡んでくるせいだよなぁ……。


「……? どうかしたかい?」


「別に」


 複雑な心境ゆえ、そうぶっきら棒に答えながらも、一朗はペットボトルの蓋を捻る。




 プシッ! 




 実は一朗は校内の自販機には売っていない大好物のコーラを、登校時に通るコンビニで買っておいたのだ。


 ゴクゴクと喉を鳴らし、弾ける炭酸を胃へと流し込む。


「ぷはーっ! この喉越しが堪らないっ!」


 そんな姿を見た黒戸が怪訝そうに言った。


「……一朗、実は家でビールとか飲んでるんじゃないだろうね?」


「飲んでないわ!?」


「ならいいんだけど。……あっ」


「今度はなんだよ?」


「……ほっぺに米粒がついてるよ」


「マジ?」


「まったく、漫画じゃないんだから」


 そう言って黒戸は頬に手を伸ばして米粒を取ると、それを当然のようにぱくりと食べる。


「――ッ!?」


 マジか……。


 さっきの睫毛といい、やっぱこいつ男子との距離感イカれてるな!? 


 お前の方がよほど漫画的だっつーの!? 


 そんなんしてくれるボーイッシュ美少女とか……。


「……スキだ」


「は? 急になんだい?」


 ――ヤッバ!? 


 つい心の声が――ッ!? 


 一朗は慌てて言い訳をした。


「いや、今お前が俺の頬っぺたから米粒取る時、前屈みになったろ? 襟元から貧相な胸とブラが見えてたぞ」


「なっ!?」


「だから言ったんだよ。『隙』だってな」


 カァッと顔を赤くした黒戸は、襟元を押さえながらも納得する。


「……そういうことか」


「飯時にオカズを提供してくれるのは歓迎だが、オカズはオカズでも、今のは夜のオカズだな」


「……ふぅん、貧相な胸をオカズと認めるんだね? なら対価を支払って貰うよ」


 黒戸は有無を言わさず一朗の弁当箱へ箸を伸ばし、早くも対価を回収した。


「ちょっ!?」


 ひょいと、揚げ団子を口へ放り込む。


「……んんっ。これ、魚か鶏のつみれを揚げたものだと思ったら、摺り下ろした蓮根をお団子にして揚げてあるのか。サクサクもっちりで美味しいね」


「そりゃそうだろ俺の好物だからな!? 数少ないメインディッシュをよくも……!?」


「あはは! 今度一朗のお母さんに、ボクの分も作ってくれるように頼んでくれよ」


「なんでだよ!?」


 ……まあ友達がうまいって言ってたのを伝えたら、喜んで作るだろうけど。


「……なんだい? 無遠慮に人をじっと見詰めて……。もう返してって言われても返せないよ。それとも、もしかしてボクの顔に何かついてる?」


「形のいい目と鼻と口がついてるな」


「……からかってる?」


「いや、なんつーかさ、お前みたいな美少女がこうやって仲良くしてくれてんのって、実はかなりの奇跡だよなーって、ふとそう思ったんだよ」


「……ふぅん、悪い気はしないね。ならこの美少女と居られる時間をもっと噛み締めたまえ」


「調子に乗んな。タイプとは言ってねーぞ」


「違うのかい?」


「そうとも言い切れない」


「優柔不断だねぇ」




 ◇

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