第53話 追及
一朗は考える。
相合い傘事件を小学生のイタズラレベルだと思った、その感想は間違っていないのではないかと。
もしも本当に黒戸達にダメージを与えたいのなら、クラスのグループメッセージにでも、決定的な瞬間を収めた写真でもアップすれば致命的なダメージを与えられただろう。
しかしそれをしなかった。
そのことから、クラスのグループメッセージをあまり使用しないタイプ、あるいはそもそもそこを利用する考えが無かった可能性もある。
あるいはそこまでのダメージを二人に与えるつもりがなかったのかもしれない。
よくも悪くもそこまでの悪人ではないのだろう。
この件で一朗は、そんな印象を犯人から受けていた。
一朗が考える犯人、それは――。
……まあ十中八九、野原だよなぁ。
決定的なのは、あの日登校してきたばかりの、野原のスカートがチョークで汚れていたこと。
あの時点では小さな違和感程度でしかなかった。
だがよくよく考えてみれば、それが随分とおかしなことだということに思い至る。
例えば前日のチョークの汚れが気づかぬまま、付着し続けるのは不自然だ。
一日のどこかでさすがに白く目立つ汚れに気付くだろうし、そうでなくてもチョークの粉など動いていれば勝手に落ちて薄くなるもの。
それに朝のあの時点でチョークを触ることもまずありえ無い。
それが日直だとしてもだ。
――しかし、これらが根拠としては弱過ぎることも一朗は理解している。
それでも勝負に出ることを決意していた。
この点を問い詰め、ごまかされたのならそれまで。
だが、きっと野原なら……。
黒戸と雪野の件が根も葉もない嫌がらせだったと周知された、この三日後。
一朗は放課後に野原を校舎裏に呼び出した。
先に待つ一朗の元へ、緊張の面持ちで野原が現れる。
告白の返事をされるのだと思っているはずだ。
……心苦しいな。
一朗もタイミング的にそれを理解していたので、第一声で断っておく。
「呼び出してすまんが、告白の返事とは別件なんだ」
「そ、そうでござったか……」と、野原はどこかホッとしているようにも見えた。
「して、何用にござるか?」
その問いに答える。
「相合い傘事件についてだ」
それを聞いた野原の表情が強張る。
「なぜそれを拙者に……?」
一朗は順に答えた。
「あの日の朝、タイミングを見計らったように現れたお前のスカートに、チョークがついてたんだ。黒板の赤い相合い傘と、白い名前を書いたのと同じ、赤と白のチョークの粉がな」
実際に一朗が目にしたのは白いチョークの粉だけだったが、ブラフをかける。
そのまま続けた。
「朝早くに二色のチョークを使うことなんてまず無いし、昨日のチョークが残ったものだとも思えない。汚れに気付いてはたくまでもなく、粉なんて動いてりゃ落ちるしな」
……どうだ?
「……」
野原は無言のまま俯いていて、表情が読めない。
もう少し詰めようか。
そう一朗が思い始めた頃、野原が口を開く。
「実はあの日……黒戸殿が雪野殿に告白したところを、拙者も目撃していたでござる……」
「えっ」




