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両手いっぱいに百合の花束  作者: 兼定 吉行
第五章 露見
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第53話 追及

 一朗は考える。


 相合い傘事件を小学生のイタズラレベルだと思った、その感想は間違っていないのではないかと。


 もしも本当に黒戸達にダメージを与えたいのなら、クラスのグループメッセージにでも、決定的な瞬間を収めた写真でもアップすれば致命的なダメージを与えられただろう。


 しかしそれをしなかった。


 そのことから、クラスのグループメッセージをあまり使用しないタイプ、あるいはそもそもそこを利用する考えが無かった可能性もある。


 あるいはそこまでのダメージを二人に与えるつもりがなかったのかもしれない。


 よくも悪くもそこまでの悪人ではないのだろう。


 この件で一朗は、そんな印象を犯人から受けていた。


 一朗が考える犯人、それは――。


 ……まあ十中八九、野原だよなぁ。


 決定的なのは、あの日登校してきたばかりの、野原のスカートがチョークで汚れていたこと。


 あの時点では小さな違和感程度でしかなかった。


 だがよくよく考えてみれば、それが随分とおかしなことだということに思い至る。


 例えば前日のチョークの汚れが気づかぬまま、付着し続けるのは不自然だ。


 一日のどこかでさすがに白く目立つ汚れに気付くだろうし、そうでなくてもチョークの粉など動いていれば勝手に落ちて薄くなるもの。


 それに朝のあの時点でチョークを触ることもまずありえ無い。


 それが日直だとしてもだ。


 ――しかし、これらが根拠としては弱過ぎることも一朗は理解している。


 それでも勝負に出ることを決意していた。


 この点を問い詰め、ごまかされたのならそれまで。


 だが、きっと野原なら……。


 黒戸と雪野の件が根も葉もない嫌がらせだったと周知された、この三日後。


 一朗は放課後に野原を校舎裏に呼び出した。


 先に待つ一朗の元へ、緊張の面持ちで野原が現れる。


 告白の返事をされるのだと思っているはずだ。


 ……心苦しいな。


 一朗もタイミング的にそれを理解していたので、第一声で断っておく。


「呼び出してすまんが、告白の返事とは別件なんだ」


「そ、そうでござったか……」と、野原はどこかホッとしているようにも見えた。


「して、何用にござるか?」


 その問いに答える。


「相合い傘事件についてだ」


 それを聞いた野原の表情が強張る。


「なぜそれを拙者に……?」


 一朗は順に答えた。


「あの日の朝、タイミングを見計らったように現れたお前のスカートに、チョークがついてたんだ。黒板の赤い相合い傘と、白い名前を書いたのと同じ、赤と白のチョークの粉がな」


 実際に一朗が目にしたのは白いチョークの粉だけだったが、ブラフをかける。


 そのまま続けた。


「朝早くに二色のチョークを使うことなんてまず無いし、昨日のチョークが残ったものだとも思えない。汚れに気付いてはたくまでもなく、粉なんて動いてりゃ落ちるしな」


 ……どうだ? 


「……」


 野原は無言のまま俯いていて、表情が読めない。


 もう少し詰めようか。


 そう一朗が思い始めた頃、野原が口を開く。


「実はあの日……黒戸殿が雪野殿に告白したところを、拙者も目撃していたでござる……」


「えっ」

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