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両手いっぱいに百合の花束  作者: 兼定 吉行
第五章 露見
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第50話 百合バレ!?

 教室に着くなり、中は騒然となっていた。


 みんなの視線の先である黒板へと目を向ける。


 そこにはでかでかと相合い傘が描かれていた。


 傘の下に書かれた二つの名は――。




 雪野栞


 黒戸悠希




 ……なるほど、これか。


 そりゃあみんなもざわつく訳だ。


 にしたって、やること小学生かよ……。


 一朗もそうは思ったが、事情を知っているため一切笑えない。


 一体、誰がこんなことを……? 


 あいつらだって気を付けてたろうに、運悪く誰かに逢瀬を見られたのか? 


 自然と一朗は教室内をぐるりと見渡し、不自然な者がいないかを探す。


 もしもこの騒ぎが愉快犯によるものならば、この場を見ていてもおかしくないと本能的に察したのだ。


 だが、それだけで犯人を見分けることなど当然できる訳がなかった。


 雪野の親友、岩田明美が憤る。


「あんなこと書かれて、ユキノンも気分悪いよね? そんな訳無いのにさぁ」


「……うん」


 雪野は友達から掛けられた、悪意の無い同情の言葉に、だからこそ傷付いている様子だった。


 そんなところへタイミング悪く――。


「やあ、おはよう一朗。なんだか騒がしいね」


 渦中の黒戸までやって来てしまう。


 ……あちゃー。


 一朗は頭を押さえたくなったがなんとか堪え、こう返した。


「お前、なんか好き勝手書かれていじられてるぞ? 黒板見てみろ」


「えっ」


 黒板の方へ振り返った黒戸は驚いた表情を浮かべ、絶句してしまう。


 そりゃショックで言葉も出ないわな。


 こうなることはわかっていたので、すぐにフォローした。


「小学生レベルのイタズラで、言葉を失うだろ? 俺も目を疑ったよ。高校生にもなってやることじゃねーよな。こういう嫌がらせみたいなのはさ」


「あ、ああ、そうだね」


 黒戸は平静を装っているが、動揺を隠せていない。


 まずいな……。


 そこへ更に、タイミングを見計らったかのように――。


「斉木殿、今少しよいでござるか?」


 野原まで現れる始末。


 全然よくねーよ!? 


 もう目茶苦茶だよ……。


「あー、野原、今はちょっと……な?」


「何かあったでござ……なんと!? 相合い傘に黒戸殿の名が!? どっ、どういうことにござるか!?」


 今度こそ一朗は頭を押さえた。


 もう収拾つかねぇ……。


 ……んっ? 


 その時、野原のスカートにチョークのような白っぽい粉が着いていることに気付く。


 なんだ? とは思ったが、そんなことを気にしている場合ではない。


 一朗は黒戸に代わり、答える。


「見りゃわかるだろ? 人気者をやっかんだタチの悪いイタズラだよ」


「な、なんだ、焦ったでござる……。黒戸どのも災難でござったな」


「まあね」とだけ黒戸。


 すかさず一朗がフォローに入った。


「ま、俺個人的には別にアリだと思うけどな。そういう作品とかも好きだし」


 ――この発言が裏目に出てしまう。


「えっ、女子同士でござるか? それは変にござるよ……。なんと申せばよいかわからぬが、とにかく不自然でござる……。生物的にもおかしいと申そうか……」


「……」


 ……まずい。


 まさか野原がこういうタイプだったのは予想外だ。


 いや、この考え方が大多数であることを、俺が甘く見たせいだ……!? 


 一朗が自責の念に駆られている隣で、黒戸が野原に合わせて頷く。


「うん、そうだね、変だよね」


 普通に笑顔を見せてはいたが、一朗にだけはその彼女の表情がとても痛々しく見えた。


 ……すまん黒戸。


 お前にそんな顔と、思ってもない言葉を吐かせちまって……!? 


 問題はそれだけで済まない。


 こうなってくると……。


「……」


 ヒソヒソと、聞き取ることは難しいが、何を話しているのかが想像に容易い会話。


 黒戸と雪野。


 二人に向けられる好奇と疑惑の目。


 それらはさながら監視カメラ。


 気分が悪いだけではすまない。


 つまりこれからは、逢瀬が難しくなってしまったということ。


 愛し合う二人にとっては大事だ。


 その後ショートホームルームが始まり、ざわつきこそ収まったが、この話題はあっという間に学年全体へ広がっていく。


 しかし、だからと言って表立って何かを言う者はいない。


 ただ好奇の目を向けるだけ。


 だがそれが、二人にはつらいだろう。

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