第45話 ライクorラブ
「好きです」
「うぇっ!?」と、リアルで変な声が漏れた。
こ、これは告白……なのか?
コミュニケーションが不得意ゆえの、突然の告白。
だが野原にしてみれば、その準備は直前の長文の時点でしていたのだろうと、一朗も気付く。
まったくそんな気配も素振りも無かった……よな?
ってことは、これはあれ……か?
友達として、人として好きって意味だよな?
恋愛フラグが立ったようには思えなかった一朗は、あえて訊ねるようなこともせず、勝手にそう結論づけて返信をした。
「文字だけのやり取りでそういうこと書くと、感情が読めないから誤解されるぞ? 俺も面白いからお前のことは好きだがな」
その後、野原から返事が来なくなる。
そして来なければ来ないで、心配にも不安にもなり、その日一朗はなかなか寝付けない、長い夜を過ごすことになるのだった。
なんなんだよもう……。
翌朝――。
……結局、あんまり寝れなかった……。
このまま家に居ては二度寝し、そのまま遅刻することが目に見えていた一朗は、逆に学校へ向かうことにする。
なんか最近、早起きして登校すること多いな……。
……まあ、意外と朝の雰囲気とか嫌いじゃないからいいんだけど。
――誰もいない、早朝の昇降口。
「あっ」
そこで偶然にも一朗は野原と出会す。
しかもこちらを見るなり野原は赤面硬直した。
普通に挨拶をするつもりだった一朗も、その言葉が喉元で止まってしまう。
昨日の今日でこれは気まずい……。
どうしたものか……。
そう悩んでいると、意外にも野原の方から言葉を発した。
「お、お、おはよう……さ、斉木……君……」
「おっ、おう。おは……えっ」
その違和感に、一朗はすぐに気付く。
「おまっ、今斉木君て……?」
いつもなら野原は斉木殿と呼んでいる。
それだけではない。
「それに、時代劇口調じゃない……」
そう、今の野原はどもりながらも、普通に現代の言葉遣いをしていたのだ。
何か大変なことが起きているのを理解しながらも、野原が次に発する言葉を待つ。
しばらくしてから彼女は意を決したように、再び口を開いた。
「ご、ござる口調に、逃げたく……なくて……。あ、じょ、冗談だと、お、思われたく無い……から。ちゃ、ちゃんと本当の私として、い、言いたいことが……あるのでっ!」
どうやら昨晩、一朗が送った「文字だけのやり取りでそういうこと書くと、感情が読めないから誤解されるぞ?」というメッセージを気にしてのことだということがわかる。
それってつまり……!?
一朗は逃げ道を塞がれたのだと気付いた。
「あ、で、でもその前に、少し付き合って欲しい……あっ、今のつ、付き合ってはそういう意味では……あっ、いや、でも、あっ」
こっちまで緊張が伝わってくるな!?
「わ、わかってるよ! 行きたい場所があるんだよね? じゃあ移動しようか」
「か、かたじけ……じゃなくて、ありがとう。つ、付いてきて……?」
どちらも上履きに履き替える事無く、校庭に向かう。
その方向には一郎にも心当たりがあった。
……まさかな。
そのまさか。
野原が目指した先は、なんと伝説の桜の木の元だったのだ。
当然そこに桜の木は無い――筈だったが。




