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両手いっぱいに百合の花束  作者: 兼定 吉行
第四章 第三の女
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第45話 ライクorラブ

「好きです」


「うぇっ!?」と、リアルで変な声が漏れた。


 こ、これは告白……なのか? 


 コミュニケーションが不得意ゆえの、突然の告白。


 だが野原にしてみれば、その準備は直前の長文の時点でしていたのだろうと、一朗も気付く。


 まったくそんな気配も素振りも無かった……よな? 


 ってことは、これはあれ……か? 


 友達として、人として好きって意味だよな? 


 恋愛フラグが立ったようには思えなかった一朗は、あえて訊ねるようなこともせず、勝手にそう結論づけて返信をした。


「文字だけのやり取りでそういうこと書くと、感情が読めないから誤解されるぞ? 俺も面白いからお前のことは好きだがな」


 その後、野原から返事が来なくなる。


 そして来なければ来ないで、心配にも不安にもなり、その日一朗はなかなか寝付けない、長い夜を過ごすことになるのだった。


 なんなんだよもう……。


 翌朝――。


 ……結局、あんまり寝れなかった……。


 このまま家に居ては二度寝し、そのまま遅刻することが目に見えていた一朗は、逆に学校へ向かうことにする。


 なんか最近、早起きして登校すること多いな……。


 ……まあ、意外と朝の雰囲気とか嫌いじゃないからいいんだけど。


 ――誰もいない、早朝の昇降口。


「あっ」


 そこで偶然にも一朗は野原と出会す。


 しかもこちらを見るなり野原は赤面硬直した。


 普通に挨拶をするつもりだった一朗も、その言葉が喉元で止まってしまう。


 昨日の今日でこれは気まずい……。


 どうしたものか……。


 そう悩んでいると、意外にも野原の方から言葉を発した。


「お、お、おはよう……さ、斉木……君……」


「おっ、おう。おは……えっ」


 その違和感に、一朗はすぐに気付く。


「おまっ、今斉木君て……?」


 いつもなら野原は斉木殿と呼んでいる。


 それだけではない。


「それに、時代劇口調じゃない……」


 そう、今の野原はどもりながらも、普通に現代の言葉遣いをしていたのだ。


 何か大変なことが起きているのを理解しながらも、野原が次に発する言葉を待つ。


 しばらくしてから彼女は意を決したように、再び口を開いた。


「ご、ござる口調に、逃げたく……なくて……。あ、じょ、冗談だと、お、思われたく無い……から。ちゃ、ちゃんと本当の私として、い、言いたいことが……あるのでっ!」


 どうやら昨晩、一朗が送った「文字だけのやり取りでそういうこと書くと、感情が読めないから誤解されるぞ?」というメッセージを気にしてのことだということがわかる。


 それってつまり……!? 


 一朗は逃げ道を塞がれたのだと気付いた。


「あ、で、でもその前に、少し付き合って欲しい……あっ、今のつ、付き合ってはそういう意味では……あっ、いや、でも、あっ」


 こっちまで緊張が伝わってくるな!?


「わ、わかってるよ! 行きたい場所があるんだよね? じゃあ移動しようか」


「か、かたじけ……じゃなくて、ありがとう。つ、付いてきて……?」


 どちらも上履きに履き替える事無く、校庭に向かう。


 その方向には一郎にも心当たりがあった。


 ……まさかな。


 そのまさか。


 野原が目指した先は、なんと伝説の桜の木の元だったのだ。


 当然そこに桜の木は無い――筈だったが。

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