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両手いっぱいに百合の花束  作者: 兼定 吉行
第四章 第三の女
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第42話 野原と黒戸

 先に一朗が声を掛けた。


「悪いな、突然呼び出したりして」


 フルフルと首を横に振りながら野原は答えた。


「構わないでござる。……して、何用にござろうか?」


「お前のことを話したら、昨日話した俺の同志の一人が会いたいって言い出してな。紹介したいんだ」


「えっ、拙者を紹介? もしや……」


 ちらりと野原が黒戸の方を見る。


 どうやら黒戸のことは認識しているようだ。


 黒戸は笑みを浮かべながら自己紹介をする。


「やあ、ボクは黒戸悠希っていうんだ。よろしくね、野原さん」


「学年でも目立つ存在ゆえ、存じ上げているでござる」


「なんだ、それなら話が早いな……ってお前、その口調になるのは男だけじゃなかったか!?」


 一朗がツッコむと、野原は自分でも不思議そうに、戸惑いながら答えた。


「なぜか黒戸殿にも口調が変わってしまうでござるな……。女子に対し、失礼致した……」


「いや、口調直ってないぞ」


「む、むむ!?」


 混乱している様子の野原に、黒戸が話し掛ける。


「ボクは構わないよ。自分が男っぽいことは自覚しているからね。嫌な気はしてないよ」


「ホッとしたでござる……。それに黒戸殿は中性的で、実によいでござるよ」


「ありがとう。……それにしても野原さんの黒髪、青々として艶やでとても綺麗だね」


「せ、拙者の髪がでござるか?」


 一朗も頷いた。


「ああ、確かに野原の髪って綺麗だよな。ゴキブリみたいにツヤツヤでさ」


 黒戸から咎めるかのような言葉と視線が向けられる。


「……一朗? 女子の髪に対して本当にその喩えでいいのかな?」


 だが、当の本人である野原は――。


「か、かたじけない……。母上譲りの、自慢のくしにござるよ」


 ゴキブリ呼ばわりをまったく気にしていなかった。


 黒戸は困惑する。


「感謝されてるし……。ちょっとついていけないから、ボクは横になってくるよ」


 本当に行ってしまいそうなので、すかさず一朗は制止した。


「おい、ツッコミが居なくなると俺も困るんだが!?」


「誰がツッコミ要員だよ。……まあ横になるのは冗談として、野原さんは相当に癖が強いね。個性を盛り過ぎというか」


「拙者のようなどこにでも居る一介の浪人が……でござるか?」


「うん、まず現代に浪人はどこにでも居ないよね」


「そうでござったな!」


 そんな浮き世離れしたやり取りをしていると、昼休み終了五分前の予鈴が鳴る。


「ああ、もうそんな時間か。野原さん、ボクと連絡先を交換してくれるかい?」


 そう訊ねられた野原は、鳩が豆シャッガンを食らったような顔をした。


「よ、よいのでござるか!?」


「一朗とはしたんだろう? なら嫌とは言わせないよ」


「言わぬでござるっ!? ……だがよもや、二日連続で電話帳に他人のデータを登録することになろうとは……。生きていると、何が起こるかわからないものでござるなぁ……」


「いや大袈裟だね」


「おおっ! さすがツッコミの名手にござる! よっ! 黒戸殿!」


 そんな野原に対し、黒戸が凄む。


「ほう? 早速いじって来るとはいい度胸だね?」


「目が恐いでござるっ!? そんなつもりは無かったでござるぅぅぅっ!?」


 意外にもこの二人の相性が悪くなかったことを、一朗は驚きながらも生暖かい目で見守るのだった。

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