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両手いっぱいに百合の花束  作者: 兼定 吉行
第四章 第三の女
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第41話 いじめの理由

「ってことで、成功したぜ!」


 昼休み。


 場所をいつもの教室から自販機前のスペースに移し、一朗が昨日起こったことを報告すると、黒戸は驚きと喜びを見せた。


「でかしたね一朗。まさかこうもあっさりやってのけるとはね」


「おうよ! もっと褒めてくれてもいいんだぜ?」


「……」


 急に黙った黒戸が、じっとこちらを見詰めてくる。


「……な、なんだよ、人の顔をじっと見て」


「……なんというか、一朗には天然垂らしの才能がありそうだなと思ってさ」


 どうやらじっと見てきたのは、この冗談を言うための布石だったのだと、一朗は理解した。


「ははは! 笑える冗談だな!」


「割りと本気なんだけどね」


「ははっ! 笑えるぜ! それに天然垂らしはお前の方だろ!」


「……もういいよ」


 なぜか黒戸は不機嫌そうに、この話題を終わらせる。


 え、なんで怒ってるんだ? 


 一朗はそう思ったが、理由を訊くことは憚られた。


「そうそう」と、黒戸が思い出したように切り出す。


「野原さんがクラス女子からハブられている理由がわかったんだ。やはりというか、男絡みで間違いなかったよ」


「よくこの短期間で調べたな」


「栞ネットワークだよ。あの子は顔が広いからね」


「なるほど。だが、男絡みっていうのは意外だ……」


「そうかい? 女の争いのほとんどは男絡みだよ?」


「いや、それはわかるんだが、野原がそんな問題を起こすイメージが湧かないんだよなぁ」


「それはそうだろうね。彼女が何かをしでかした訳じゃないんだ」


「ん……? どういうことだ……?」


「五組には佐野君という女子に人気の男子が居るそうなんだけど、彼が野原さんのことを可愛いと言ったそうなんだ」


「……まさかそれで、その佐野君を好きな女子達が野原を逆恨みしたってこと……か?」


「みたいだね。野原さんは運が悪かったんだ……。一朗が最初に言った通り、女子の嫉妬で間違いなかったよ」


 一朗は怒りと呆れを同時に覚えてしまう。


「なんだかなぁ……」


「とにかく、そういう事情で野原さんは男子の前で態度が変わるという、まるで男遊びをしているかのような、女が嫌いなタイプの女であるというミスリードが行われたんだ。そして女子の間でシカトが始まれば、男子も追従せざるを得ない。……彼女はとても辛いだろうね。だからこそ、ボクらでそれを終わらせよう」


「おう!」


「じゃあ早速、この場へ野原さんを呼び出してくれないかい?」


「えっ、今か?」


「もちろん。昼休みが終わってしまうよ?」


「……わかったよ」


 一朗がスマホを取り出して「ちょっと自販機まで来てくれ」とメッセージを送ると、案の定野原からこんな返事が来る。


「えっ、どうして?」


 メッセージは普通の文章だなと思いながらも、一朗は頭を働かせた。


 何かうまい理由を考えないと……。


 そして、こう送る。


「理由が無きゃ友達を呼んじゃだめか?」


 野原の孤立した状況を知っているからこそ、こう書けば必ず来てくれるだろうという確信があった。


 だが、そんな状況を利用することに、一朗は少なからず罪悪感を覚える。


 案の定、色好い返事が届いた。


「そうだね。ごめんなさい、すぐに行くね」


 そのすぐ後、野原は二人の前に小走りで現れる。

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