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両手いっぱいに百合の花束  作者: 兼定 吉行
第四章 第三の女
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第39話 偶然の再会

 この日の放課後は、久し振りの緑化委員会の集まりのある日だった。


 めんどくせー。


 などと思いながらも、ちゃんと出席のために二階にある五組の教室を訪れた時だ。


 一朗は先に着席していた委員会メンバーの一人を見て、思わず「あっ」と声を漏らす。


 野原早雪!? 


 そう、なんとこの場に野原が居るではないか。


 どうやら彼女も緑化委員だったことに気付かされる。


 ……マジかよ。


 存在感無さ過ぎて、前回出席した時には全然気付かなかったな……。


 だが、これはチャンス。


 黒戸からアドバイスを受けた通り、自然に野原と接触ができる数少ない機会だ。


 しかし――。


 ……ダメだ、話し掛けられねぇ。


 クラス順に着席しているようで、机の位置が遠く、自然に接触するのは困難。


 ひとまずは始まった集会の、議題やら様々な話やらに耳を傾け、委員としての活動に徹する。


 いずれはチャンスが巡ってくると信じながら。


 そしてその時がやって来る。


 会が始まって二十分が経った頃、三年生の代表が言った。


「えー今日はこの後、花壇に花を植える緑化のための実務活動をします。皆さん、下駄箱で靴に履き替えて中庭に集合して下さい」


 来たか!? 


 着席している室内と違い、外ならば自由度が増すし、接触の何度も下がる。


 早速外へ出た一朗は、その機会を窺った。


 もちろん緑化活動を行いながらだ。


 ビニールポットに入ったカラー、ペチュニア、クレマチス等の花の苗。


 それらを教師や委員会の先輩が見せた手本の通りに、花壇の空いたスペースに植え変えていく。


「ふぅ」


 ……結構楽しいな。


 一朗は裏の目的を完全に忘れ、思いきり土いじりを楽しんでいた。


 さあ、次は何を植えようかな。


 うきうきと、背後も確認せずに立ち上がろうした時だ。


 ドンと、腰が誰かにぶつかってしまう。


「あっ! すみませんっ!」


 そう謝りながら振り向いた一朗は、その相手を見て驚く。


「あっ」


 そこに居たのは怯えた表情をした、野原早雪だったのだ。


 野原――!? 


 うっかり名前を呼びそうになり、なんとか堪えて話し掛ける。


「あっ、ああ、ええと、シャーペン落とした子だよね? ほら、午前中に」


 野原の方も「あっ」という顔をし、おどおどとした表情や仕草とは不釣り合いな、やはり武士言葉で返事をした。


「その節は大変世話になり申した」


「お前も緑化委員だったんだな」


「左様」


 目的を忘れていたからこそ、自然に接触ができたといえよう。


 この偶然に感謝しながら、一朗は会話を続けた。


「あれか? 俺みたいにクラスのヤツらに緑化委員を押し付けられた口か? それとも花が好きとか?」


「そのどちらも……でござろうか」


「なるほどな。……あ、俺は斉木一朗って言うんだ、よろしくな。お前は?」


「拙者は野原早雪でござる。以後お見知りおきを、斉木殿」


「おう」

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