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両手いっぱいに百合の花束  作者: 兼定 吉行
第四章 第三の女
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第34話 臭わせ

 中間テストも終わり、再び平穏さと退屈さを取り戻した日常が戻ってきた。


 だがテスト期間中、早朝に勉強することを習慣付けていた一朗は、早くに目が覚めてしまう。


 このまま家に居ても特にやることもなく、仕方がないので、大分早いが学校へ向かうことにした。


 もしかしたら以前あったように、雪野とばったり会うなんてこともあるかもしれないなと、そんな淡い期待を抱きながら――。


「行ってくるわ」


 いつもより、少しだけ低い位置にある太陽。


 普段よりも人気の無い通学路。


 たまに追い抜いていく同じ高校の生徒は、朝練があるような、大会で結果を出している熱心な部活道に所属している者だろう。


 住宅街では鉄柵越しの庭先に、赤や青の紫陽花が咲き始めており、目を楽しませてくれた。


 ……気持ちのいい朝だな。


 そうこうしている内に、学校へ到着する。


 その上、昇降口には――。


「あっ、斉木君おはようっ!」


 なんと望んだ通りに、雪野が登校していたのだ。


「今日は早いんだねっ!」


「おはよう。なんか、早く起きちゃってさ」


「そういえば前にもこんなことあったよねっ」


 覚えていてくれたことが、一朗はとても嬉しい。


「……ああ」


「じゃあ教室に行こっか!」


「そうだな」


 一朗は下駄箱で靴を履き替えようとし、雪野に近付く。


 そこで異変に気付いた。


 ボソリと、一朗は呟く。


「そういえば昨日SNSで、匂わせツイートしてたな……」


「何の話? 芸能人?」


「いや、雪野の話」


「えっ誤解だよ!? 私そんなのしてないよっ!?」


「ニンニクマシマシなラーメンの大盛りをお父さんと夜中に食べに行ったって、わざわざ写真まであげてたろ?」


「あ、例えとかじゃなくて実際に匂わせってこと!? っていうか、それを言うってことは……私臭いっ!?」


「臭いってことはないけど、アリシンの権化かなとは思ったかな」


「臭いんじゃんっ!?」


 そんなやり取りをしているところへ、黒戸も登校してきた。


「やあ、二人ともおはよう。今日は随分と早い……」


 そこまで言ったところで黒戸は閉口し、怪訝な表情で訊ねる。


「もしかしてだけどさっきまでこの場所で、タマネギ星人とニラ怪人の決闘が行われていたのかい?」


「私のニンニク臭だよっ!! 臭いなら臭いって言えばいいのにっ!?」


「……ああ、昨日SNSに載せてたニンニクマシマシの……」


「そういうことっ!!」


 この後雪野はニンニクの臭いを消す効果があると言われている緑茶、リンゴジュース、ヨーグルトドリンクを自販機で買い、次々に飲み干すのだった。


 しかし意味はない。


 ニンニクの臭いを消すには、食後にコーヒーを飲むのがおすすめだ。


 ――それから三人揃って、二組の教室へ移動する。

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