第33話 百合サンドイッチ
いい汗をかき、爽やかな気分になった三人は並んで床に座り、息を整える。
意外と中腰で踊り続けるのには、体力が必要なのだ。
しかし、そのお陰で一朗はすっきりできた。
それなのに隣に座り込んだ、黒戸が改まった様子で先程の話題を再び蒸し返す。
「でも本当、全部一朗のお陰だよ」
「なんだよまた、しつこいぞ」
だが黒戸はお構い無しに続けた。
「あの日一朗に会わず、桜を燃やしてしまっていたら、ボクはもう二度と本気の恋をしなかったと思う」
「……そうか」
「だからさ、一朗」
「ん?」
「そのお礼にキスをしてあげようか?」
「は!?」
「ちゅっちゅっちゅー」
「ってもうしてんじゃねぇか!?」
黒戸はふざけながらも、本当に一朗の頬にキスをした。
正直なところ一朗も嬉しかったが、同時にこんな心配もしてしまう。
こいつ、自分の恋人の前でそんなことしていいのかよ!?
チラリと、黒戸とは反対側に座っている雪野の方へ目をやると、案の定こちらを睨んでいた。
しかしその理由は、一朗の想像していたものとは違っている。
「私だって斉木君には感謝してるもんっ! だからちゅーするのーっ!」
「ええっ!?」
「ぶっちゅー」と言いながら、雪野が柔らかな唇を頬に押し当ててきた。
なんだこれは……!?
なんだこれは……!?
最高かよ……ッ!? !?
二人はふざけているのか、両サイドから一朗の頬にキスを続けた。
頬をべちゃくちゃにされたが、不快ではないどころか、むしろ嬉しい。
……まあ、酔っ払い共のやってることなんだけどね……。
――やはり二人はまだ、完全にはアルコールが抜けていなかったようである。
両手に花。
……ただし百合ってか?
この日以降、一朗の前でも容赦無く、雪野と黒戸は二人の世界に入り、のろけ出すようになった。
真に友として、仲間として認められたということだ。
それが幸か不幸か、一朗にはもはや判別がつかない。
そして栄養ドリンクの飲み過ぎには気を付けようと、学びを得るのだった。




