第24話 ヤケクソ
もはや一朗は自棄になっていた。
自分で秘すると決めた想いすら、あっさりと吐露してしまう程に。
手元から雪野へ目線を上げ、はっきりと告げる。
「お前が好きだ」
「えっ……えっ」
顔をみるみる真っ赤にし、あわあわとしどろもどりになる雪野が滑稽で、少しだけすっきりとした一朗だったが、すぐにそんな自分に嫌気が差した。
「……」
「……えっと」
そう言葉を詰まらせる雪野に、ようやく冷静さを取り戻した一朗が否定する。
「あー困らせる気は無かったんだ。ちゃんと諦めたし。だってお前の恋愛対象ですら無いんだしな」
「えっ!? あっ、そ、そっか!?」
まだ取り乱した様子の雪野へ続けた。
「変なタイミングだったけど、気持ちにはっきり区切りをつけるためにも伝えておこうと思ったんだ。……驚かせてすまん。後、嫌な思いさせて悪かったな」
「驚きはしたけど、斎木君から好意を向けられて嫌な思いなんてしてないよっ!? むしろ嬉しいというか……」
とても優等生的な回答だ。
こういう場面が多々あったからこそ、相手を傷つけず、あまつさえ気分をよくさせるような返しができるのだろう。
それにしては、平静さを欠いているようには見えるが――。
「……」
気まずい沈黙が場を支配する。
一朗は告白したことを早速ひどく後悔した。
……こんな状況じゃ、勉強する雰囲気にならないよな。
まずった……色んな意味でやらかした……。
せめて――と、こちらから気持ちを切り替えるように別の話題を振る。
「それにしても黒戸のヤツ、見たい電柱ってなんなんだろうな……。電柱見てどうするんだ?」
「ああ、それ私も思ったっ! でも多分、写真を撮りに行くんだと思うよっ」
「写真を?」
「うんっ! 写真が好きみたいで、いい被写体とか見付けると居ても立ってもいられないみたいっ」
「へえ」
「古い路地とか神社とかの写真見せて貰ったし、電柱もそういうことなんだと思うよっ」
初耳だった。
俺さえそんなこと知らなかったのに、付き合っているとはいえ、雪野にはもうそんなことまで話してるんだな……。
写真のことだって……。
あいつはそんなにも、没頭するような何かを持っていたんだな……。
当然だ。
俺は学校での黒戸しか知らないんだから……。
雪野と違って――。
今度は自分がはっきりと雪野に嫉妬していることに気付き、一朗は戸惑った。
――俺は一体、何を……?
「どうせなら私も一緒に行きたいって言ったんだけどね? 写真を撮る時は一人がいいみたい。暇な時間が長くてつまらないよとか、私をほっぽっちゃうしーとか、なんか色々理由つけて断られちゃうんだ……」
「そうか。あいつにとっての聖域みたいなもんか」
「ぶーぶーっ!」と、雪野は不満を露にする。
「実際にぶーぶーとぶー垂れてる人間をリアルで初めて見た……」
「じゃあ私が斎木君の初めての人だねっ!」
「言い方!?」
「……えっ?」
「いや、わからないならなんでもないっす」
まだピンと来ていないのか、雪野は小首を傾げていた。




