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両手いっぱいに百合の花束  作者: 兼定 吉行
第二章 オリエンテーション
21/57

第21話 同士

 黒戸が改めて訊いてくる。


「それでだ。一朗は栞のどこが好きなんだい?」


 それを訊くのかと思いながらも、一朗は即答した。


「顔」


「うん」


「性格」


「うんうん」


「仕草」


「わかる」


「声」


「可愛らしいよね」


「ちっちゃいのにずんずん力強く歩くところ」


「それでいてガニ股って訳でも、男らしい訳でもない」


「ああ。元気はつらつ、天真爛漫な女の子って感じがいいんだよな」


「わかってるじゃないか一朗」


「歩く時の腕の振り幅も好きだ」


「いいね、よく見てる。それに耳だって可愛いんだ」


「ああ、わかるぜ。形もだし、感情が高ぶるとすぐに赤くなるところもいいよな。あと何か食べてるところも可愛い」


 ここで「はあ」と、黒戸が一つ息を吐く。


 そしてしみじみと言った。


「……本当に好きなんだね」


「……まあな。だからお前が羨ましいよ。こればっかりは仕方が無いことだけどさ……」


「……そうだね」


 そう言って黒戸は、どこか寂しそうな目をする。


 叶わない恋をしている自分への、憐れみの眼差しだと一朗は理解した。


 より素直に、気持ちを白状する。


「誰かに雪野のことが好きだとか、どこが好きなのかを打ち明けたことなんてなかったから、なんだか不思議な感じだ……。少し気持ちが軽くなったよ」


 これに黒戸が同意した。


「それはボクもさ。いいものだね、推しについて語り合えるのは」


「推しって……。その推しと両想いとか、羨ましいヤツだぜ」


「ははっ! だろう?」


「……ま、お前は男から見ても女から見ても魅力的なヤツだから、負けたことに妙な納得感もあるよ」


「そんなに褒めるなよ? ってか一朗から見てもボクは魅力的なのかい?」


「それはそうだろ? 間違いが起こるなら受け入れるさ。まあ、そんなことは起こらないんだがな」


「さあ、どうかな?」


「からかうなよ……。俺なんかに含みを持たせてどうすんだっての。つーか、雪野というものがありながら浮気なヤツだな」


「ははっ、冗談さ」


「わかってるよ」


「でもね、ボクは女の子にしか恋愛感情が向かない訳じゃないんだ」


「……へえ」


 意外だ。


 てっきりそうだとばかり思っていたが――。


「そうなのか?」


「うん、栞のことは栞だからこそ好きなんだ」


「……わかるよ、その気持ちは。俺は女しか好きにならないけどな」


「はははっ! 普通はそうだね」


 そこで余鈴が鳴った。


「……戻るか」


「ああ」


 そう頷いてから、黒戸が提案してくる。


「一朗さえよかったら、また栞について語ろうじゃないか」


「……のろける気だろ」


 黒戸はニッと、男から見ても爽やかで格好のいい笑みを浮かべた。


「まあね」


「……仕方ない、聞いてやろう。俺も語らせて貰うがな」


「もちろん。……それにしても、一朗は本当に栞が好きだったんだね」


「まあな。泣かせたら許さないぞ」


「ふふっ、そこは安心してくれていいよ。……ああ、でもベッドの上ではびしょびしょに泣かせちゃうかもね」


「おまっ……ゴホッ! ゴホッ!?」


 一朗は驚きから咳き込んでしまう。


「大丈夫かい?」


「平気だ。それよりお前はそういう下ネタを――!? ってかもうそんな関係に!? ……ふむ、詳しく聞かせて貰おうか」


「ほら行くよ。昼休みが終わるだろう?」


「クソッ、わかっててこのタイミングで俺が気になるような話を……!?」


「くっくっく」と、黒戸は楽しそうに笑いを堪えていた。


 隠し通すことに決めた雪野への想いが黒戸にはバレてしまったが、逆に友情が深まったのは予想外の収穫だったと言えよう。


 そして、せめて雪野にだけは、今度こそ本当に隠し通そう。


 一朗はそう強く誓った。

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