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両手いっぱいに百合の花束  作者: 兼定 吉行
第二章 オリエンテーション
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第19話 強い誓い

 オリエンテーションも終わり、帰りのバスの車内。


 行きよりも確実に仲良くなった鈴木と話す気でいた一朗だったが、疲れからか彼はすぐに寝てしまうのだった。


 運動が得意なタイプではなかったし、無理もないだろう。


 そんな事情もあり、気付けば自然に雪野と他愛の無い会話をしていた。


「昔はこの辺りも一大観光スポットだったなんて、信じられないよな」


「閑散としてる今の方がよくないっ? より牧歌的でさっ」


「……かもな。でも――」


 一朗は車窓から流れる町並みを眺めながら続ける。


「こういうメルヘンな建物のお土産屋なんかは、バブルとか田中角栄の時代の負の遺産みたいな光景だけどな。廃墟だらけだし」


「さっきのドブ発言といい、鈴木君ちょっと口が悪いよっ?」


 そう釘を刺されたが一朗は構わず続けた。


「もはやホラー感漂ってるけどな、この寂れ方は」


「れ、レトロって言うんだよっ? そういうのは」


「一瞬口ごもったってことは、雪野もそう感じたんだろ」


「ちょっとだけホラーゲームのサイレントリッジ感あるなーって思っただけだよっ!?」


「それ雪野も大概だろ……ぶっ!」


「なんで笑うのっ!?」


「いや、ホラゲーやるの意外だなって思ったら噴いてた」


「ホラゲは乙女の栄養だよっ!?」


「いやさすがにそれは聞いたことねぇよ! ……ほんっと、雪野って意外性の塊だよな」


「もうっ、何それっ!?」


「いい意味でだから」


「そうなのっ? ならいいけど……ってうまく丸め込もうとしてないっ!?」


「惜しい、あと半巻きくらいで完全に丸め込めたのに」


「やっぱりそうだったっ!?」


「おもしれー女」


「ほんとっ!? ――ってそれ誉め言葉としてじゃないよねっ!?」


「バレたか」


「もぉーっ!?」


 元気に話をしていた雪野だったが、しばらくするとすやすや寝息を立て、可愛らしい寝顔も晒すのだった。


 ……ほっぺぷにぷにだな。


 触りてぇ……。


 そんな考えを振り払うように一度深呼吸してから、一朗も瞼を閉じる。


 ……俺も眠るか。


 そう思ったところで、隣から鈴木が話し掛けてきた。


「斎木君、凄いね……。雪野さんとあんなに仲良く話せて」


「……なんだお前、起きてたのか。……別に凄くないだろ。雪野はあの人好きのする性格だからな。あいつは誰とでもあんな感じだよ」


「それだけじゃないよ。斎木君は黒戸さんとも親しいじゃないか」


「ああ」


 ……まあ、そう見られるか。


「クラスに友達は居なそうなのに」


「やめろその事実は俺に刺さり過ぎる」


「……だから、これからも仲良くしようよ。非モテ同士さ」


「……そうだな、陰キャ」


「ひどい。学年のマドンナ達と仲良くなる方法教えてくれなきゃ許さない」


「ねーよそんな方法」


「連絡先交換しようよ」


「……ったく、しゃーねーなぁ」


 こうして一朗に、クラスの男子で初の友達ができた。


 実りあるオリエンテーションだったといえよう。


 しかし大きな問題にも気付かされた。


 改めて雪野のことを諦めきれていないどころか、心から好きであることを再認識させられたことだ。


 せめて――と、一朗は考える。


 せめて雪野のことが好きだというこの気持ちを、最低限雪野本人や黒戸にだけは隠し通さないとな……。


 そう固く誓うのだった。




 ◇

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