第7話 「瞳の裏の悲しみは」
「ねえガウム、なんで護神を引き受けたの?」
カインドの突然の問いかけに驚きながらも、ガウムは少ない記憶を振り返り、答えを捻り出す。
「直感、ですかね」
「俺もなんでか分からないけど、ガウムがドールとテールの隣に立つことに違和感は無いな」
「おふたりに無礼なことをした人は全力で斬りますから!」
笑顔で物騒なことを話すガウムにカインドは若干引いているが、ドールはドヤ顔だ。
ドールとテールに何かあったらすぐに駆けつけるのは、護神として当たり前のことだ。守るべきものを守らなくてどうする。
「本当に、頼もしいな…」
髪と同じ、海のような青い瞳でガウムのことを見つめているカインドから、微かに寂しさが垣間見えた。
――どうしても、見逃せない何かがカインドにはある ような気がした。
「本当に弟のことだけですか?悩んでいるのは」
「…ばれちゃったか。実はね、ドール達三つ子以外に一人、妹がいてね」
少しの間を置き、話し始めた内容は想定外のものだった。
カインドの妹――つまりその妹も神というわけだ。
「今、その妹は消えてしまったんだ。いつか絶対、取り戻してやる」
――消えてしまった。なんとも言えない表現にガウムは首を傾げる。
それを聞いているドールもカインドに似た寂しげな表情を浮かべていた。きっとその妹はドールの姉妹でもあるのだろう。
「でも、ガウムは気にしなくて大丈夫だよ!」
カインドはそう言うが、大丈夫では無いことはカインドとドールの表情を見ただけでわかる。
「カインド様。何かあったら遠慮なく私に言ってください。できる範囲で力になりますから」
「ありがとう!俺もガウムが困った時は力になるよ!」
「はい!ありがとうございます!」
カインドは先程の表情とは違い、明るく優しい笑顔に戻っていた。
「ご飯ー!」
ドールが見ている方には、食事を用意しているテールがいた。
テールは当たり前かのように両手に重ねられたお皿を持ち運んでいるが、とんでもないバランス感覚だ。
「お待たせー!」
食事の用意が終わり、全員が揃った。
「やっと開いた!僕を置いていくなよ!」
その乱入者に全員は凍りついてしまったのだった。
2024.03.03 冒頭の会話を変更しました。