第6話 「兄上」
「なんだかうるさいなあ」
「……」
「無視はやめてくれよ」
「………」
「まあいいか。必ずあの子は手に入れるからなあ」
「――っ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カルムアと別れたガウム達は次の人物に会いに行くことになった。次の人物とは――
「私たちの他にも神が居るの」
「護神になったなら挨拶しておかないとね…」
どこかテールは不安そうな顔を浮かべる。どんな人なのだろうか。
「双子の兄弟よ。ガウム、私たちに何かあったら守ってね」
「――え」
それは――本当に、神なのか。そんな疑問すら抱いてしまうようなドールの発言に、ガウムは警戒心を覚える。
「着いたね。兄上、出てきていただけますか?」
扉が開くと、美しく、高貴さを感じさせる青色の髪と瞳の青年と、深く、鮮やかな赤色をした髪と瞳の青年の二人が出てきた。この二人が、件の神だろう。
「よく来たね!」
「「会いたかった!」」
青髪の青年が話すとドールとテールは嬉しそうに答えた。なんだか微笑ましい。
しかし――
「寂しかったよ…!」
問題は赤い髪のほうだ。こいつはドールとテールに歩み寄り、抱きつこうとした。
その時、ドールとテールからの助けを求めるような視線を感じたガウムは――
「――下がっていただけますか?」
直感か何か分からないがこいつと二人を接触させてはいけないと感じた。振り返ると、二人は相当ガウムに感謝している様子だった。
「なに?妹達に触れちゃだめってこと?」
「あなたが神だろうが関係ありません。嫌がっているのが分からないんですか?」
「全然嫌じゃないよね?嬉しいよね?」
「「……」」
二人は口を開こうとしない。こいつ、本当に神なのだろうか。こんなやつ消されてしまえばいいと思うが。
会う前にテールが不安そうにしていたのも納得だ。
「嬉しそうじゃないか!よっぽど僕に会えるのが待ち遠しかったんだなあ」
「――」
ガウムの中で、何かが切れた。
実はカルムアと別れ、ここに来るまでに剣を貰っていた。ガウムに剣を渡している時点で相当ドールとテールは警戒していたのだろう。
ガウムは一切の迷わずにその剣を抜き、堂々と剣を構えた。
構え方など習っていない。しかし、何故か分かるのだ。
「お前、何してんだよ。神に向かってどんな態度?」
「いい加減にしろってその子も言ってただろ。やめろよ。お前のほうが神としてどうなんだ」
青い髪の青年が止めに入った。このままだったら本気で斬っていた。
「本当にごめんね。弟が馬鹿で。ドールとテールも、ごめん」
「全然、兄上が謝らないでください。兄上が悪いわけじゃないんですから」
「そうそう!」
兄弟で性格が全く違う。青髪の青年の方が兄のようだ。
「いえ、私も少し神相手に無礼でした。申し訳ございません」
「謝らないで!君、新しい護神だろう?ドールとテールのこと守ってくれて、ありがとう」
「与えられた役割相応の働きをしただけです。ええと…」
「俺はカインド!こいつはテルボ。よろしくね!」
「私はガウムと申します。カインド様、よろしくお願いします!」
カインドは優しさの塊みたいな人だ。ドールとテールに好かれていて当然だ。
テルボは言わなくても分かるだろう。最低だ。
カインドもテルボのことをあまり好いているようではなかった。あんな性格の弟を持っているのも大変だ。
最初に出会った人がドールで良かったと心の底から思う。もしも、最初に出会ったのがテルボだとしたら、間違いなく耐えられなかった。ガウムはドールとテールの護神になれて幸せだ。
「そうだ!四人でご飯食べようか!そろそろお昼だ」
「いいですね!テール、お願いね」
「うん!」
早速「四人」で食事をしに向かおうと思う。なんだかんだ食事のときが一番仲良くなれる気がする。
「ねえ、僕は?」
「はい?抜きですけど?当然です。ドールさんとテールさんに嫌な思いをさせますので」
「はあ?僕は神だ…」
「さあ皆さん行きましょうか!」
ぶつぶつ文句を言っているようだが無視する。
テルボが可哀想に見えてくるが、関係ない。
悪いのはテルボだ。
テルボを部屋に残して、四人は食事に向かった。