第5話 「王家」
窓から光が差し込む部屋で、寝起きのガウムは空を見つめていた。
「ガウム!起きてる?朝ごはんだよ!」
誰かが部屋の扉をノックした。
まだぼやける意識を無理やり使い、起き上がる。
「おはようございます――テールさん」
「よく寝れた?」
「はい!」
テールに連れられたどり着いたのは、昨日食事をした部屋。
テーブルには温かいスープ、焼きたてのパンが用意してある。
「これもテールさんが?」
「うん!基本的にご飯の用意は私がやってるの!」
「ありがとうございます!」
照れたように笑いながらこちらを見るテール。
テールが作ってくれる美味しい食事を毎日食べられると考えると相当幸せだ。本当にありがたい。
「ガウム、おはよう」
「おはようございます、ドールさん!」
「早く食べたい」
「「「いただきまーす!」」」
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食事が終わり、三人は雑談をしていた。その中で王家の話が上がり、今日会いに行くことになった。
「まずは着替えようか」
連れてこられたのは服がたくさんある部屋。
と言っても全て同じデザインの服だ。
「ここにある服は全て護神専用の服よ」
「護神は戦う時もあるから、丈夫に作られてるんだ!」
早速着替えようと鏡の前に立つと、初めて見る自分の姿が映る。
ガウムは、背中に届くくらいの真っ白な髪、灰色の瞳、そして何故かドールやテールと似た巫女服をまとっていた。服装だけでなく色々なところが似ている気もするが。
「んーと、ガウムくらいならこのサイズかな」
着てみるとピッタリだ。
「これからはこの服を着て」
「わかりました」
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着替えが終わり、王家の元に向かう。
「女王からでいいかな?どうせ暇だし」
「そんな女王って暇なんですか?」
「今の時期は仕事ないんだってさ」
食事をしたところからは少し離れているようだ。
「この城は中央に神、左右に王家の部屋があって、護神はすぐに守れるよう神のすぐそばにいなきゃいけないの」
「王家は離れてるところに用事がある時移動が大変みたい。私たちには魔法があるから関係ないけど!」
「ガウムも、もし離れてる所に用事があるなら言って。魔法使ってあげるから」
「ありがとうございます!」
色々教えてくれる二人には感謝しかない。
と、そんなことを話しているうちに部屋についたようだ。
「遊びに来たよー!」
「今いる?」
「ドール様!テール様!」
勢いよく扉が開いた。
笑顔でそこに居たのは、紺色の長い髪をポニーテールにし、紺色と黄金で左右色が違う瞳の女性。
紺色を基調とし、所々黄金の装飾で飾られている服をまとっており、高貴な雰囲気を感じる。
「――そちらの方は…?」
「私たちの護神よ」
「珍しいですね!護神をつけるなんて。最後に守護者をつけていたのは、私の祖父の代だったと」
「そうね。そろそろ本格的にあれが始まるから」
「なるほど!それなら納得です」
話についていけない。全く訳が分からない。
「はじめまして。女王のカルムア・ノクスと申します。ガウムさん、よろしくお願いします!」
――女王・カルムア。
女王と言う割には親しみやすい。
「ドールさん、テールさんの護神、ガウムです。カルムア様、よろしくお願いします!」
他人も同然なガウムとカルムア。しかし、何故かお互い波長が合う気がした。
護神になった以上、この城の人々とは長く付き合うことになるだろう。今のところは上手くやっていけそうだ。
ガウムの護神としての役割をこなすため、そしてドールとテールの期待に応えるために、少しでも頼れる人を増やしておくことは大切だ。
ガウムはどこまでいけるのか、胸を踊らせていた。