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「声は心臓を刺して」
――ガウムが幸せを噛み締めたときから、少しばかり遡る。
食事が終わり、守誓式が行われていた誰もいない会場でひとり、ドールは佇んでいた。
「――お前」
「そんなに殺気立たなくてもいいじゃない?意識だけ飛ばしてるのだから」
長い金髪の女は、そう言ってドールを見つめた。
艶っぽい声に撫でられているようで、気持ちが悪い。
「キールは居ないのねえ」
「!?」
「――うふふっ」
含んだような女の言葉に、背筋が凍った。
焦燥感にかき乱される。
それと同時に、この幸せな日々が終わってしまうことへの寂しさがあった。
「散れ」
絡まり出した感情を込めて拳を振るう。
拳に当たった感触は無く、女の姿は霧散した。
――もう、時間が無い。もう、次に動き出さなければならない。
胸に棘が刺さって抜けないまま、この場を去った。
これにて、第1章が終わりとなります!一話でも読んでくださった方、そしているか分かりませんが、ここまで全て読んでくださった方に心から感謝を!
これからもお付き合いいただけると嬉しいです!