終奏 「笑顔」
外には日が昇り、部屋の中には、暖かい陽の光が差し込んでいた。
ふと、隣を見る。すると――
「ん…?」
ガウムの真横にはカインドが眠っていた。
確か、昨日部屋から出ようとした途端、カインドに引き留められた。
そして――
「あ……!?私あのまま…」
カインドに引き留められた後、そのまま寝てしまったのだ。
こんなこと、立場上あってはならないはずだ。
守ると誓ったドールやテールとならまだしも、カインドは別の括りだ。
本来近くに居るべきドール達に会ったらどんな顔をされるだろうか。
「と、とりあえず…ドールさん達のとこ行きますか…」
動揺が隠せないまま部屋を出て、いつも食事をしている部屋へ向かう。
部屋に入ると、既にドールとカルムアが居た。
「おはよ〜」
「おはようございます!ガウムさん!」
「あわ…お…おはようございます」
あまりにもぎこちない言葉になってしまう。
「どうした?ガウム」
「あっその…昨日は…」
「「そういうことかー!」」
ドールとカルムアが口を揃えて言った。
「兄上が引き留めたんでしょう?」
「………そうです。でもなぜ?」
「ガウムはそんな事しないじゃない」
カルムアも頷き、ドールの意見に同意している。
正直なところ、ガウムも自分自身のことをよく分かっていない。それでも、ドールが言うのならそういうことなのだろう。
「――!」
「兄上、おはようございます」
「おはようございます、カインド様!」
話の最中、眠たそうな目を擦り部屋に入ってきたのは、話題に上がっていたカインドだった。
「あ!ガウム!昨日はごめんね」
「〜~!」
「………?」
「――ふっ」
「……ふっあはははは!」
思わずドールとカルムアが吹き出した。
「どうしたの~?」
「何があったんですか?」
「ずるいですよ~」
テール、レンカ、ナスタが朝食を持って来た。
みんなが笑顔を交わし合うこの空間が愛おしくてたまらなかった。
だから、絶対にこの笑顔を亡くさないようにガウムはここに居るのだと、護神であるのだと、ここでようやく実感したのかもしれない。