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神の歌  作者: おさかな
第一楽章 始まりの音
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第14話 「満月、涙の貴方」

「かんぱーい!」


 守誓式が終わり、ガウム達は食事を楽しんでいた。

 テーブルに並べられた色とりどりの料理は、全てテールの手作りだ。


「「ガウムさん!」」


 重なった声に呼ばれ、振り返ると、同じ金色の瞳を輝かせた少年、少女が居た。


「どうしたの?ナスタ、レンカ」


 ガウムを呼んだのはカインドの護神・ナスタと、カルムアの星・レンカだった。

 ナスタとレンカの二人は、双子であり、ナスタが兄、レンカが妹だ。


「「お酒いかがですかー?」」


「ありがとう」


 グラスに注がれたお酒を渡してくれた。

 綺麗な紫色をしたお酒は、ワインだろうか。


「そういえば、二人は飲めるの?」


「まだ二十歳じゃないんですよ~」


「もうちょっと待っててください!」


 ナスタとレンカは本当に似ている。息もピッタリだ。


「待ってるから、いつか飲みましょ!」


「「もちろんです!」」


 そう言って二人はどこかへ走り去った。


「ドールさん!テールさん!」


「ガウム、楽しんでるー?」


「ガウム!守誓式お疲れ様!ねえ、ほんとに大丈夫なの?」


 ドールはいつもより表情が緩んでいる。笑顔が良く似合う。

 一方、テールはかなりの数の料理を作っていたためだろうか。目が、死んでいた。


「ドールさん、テールさんもお疲れ様でした。テールさん、美味しい料理、ありがとうございます。休んでくださいね?」


「だいじょーぶだよー」


「棒読みですけど……」


「これは必殺技使うしかないか?」


 ドールがニヤリと笑う。


「なんですか、必殺技って」


「教えちゃうー?」


「もったいぶらずに教えてください!」


「ふっふっふっそれはね…」


「……」


「お酒だー!!!」


「―――?」


「あ!カルムアー!」


 ドールが呼びかけたほうには、カルムアが居た。


「どうしたんですか?」


「そのお酒貰ってもいい?」


「大丈夫ですよ!どぞどぞ」


「テールはお酒好きなんだ~」


「そうなんですか!?」


 意外だ。


「テール!飲んでいいよ!」


「ほんと!?カルムアありがとう!」


 テールの目に輝きが戻った。相当疲れていたのだろう。

 お酒を飲み始めたテールは満面の笑みを浮かべていた。

 そんな彼女達を見ていると、どこか力が抜ける。

 ここに居れることが、何よりの幸せだ。


「ガウムさん、お疲れ様でした!」


「カルムア様もお疲れ様です!」


 月明かりに照らされたカルムアの姿は神秘的なものだった。

 今宵の満月すらも、カルムアの装飾のようで。


「……?どうなさったんですか?」


「いえ、なんでもないです。綺麗だな~と」


「ほんとですね!満月綺麗!」


 伝わっていなかった。本当にカルムアらしい。

 訂正するのも恥ずかしいのでやめておく。


「――ん?」


 向こうが騒がしい。


「どうしました?」


「ちょっとあっち行ってきますね」


「分かりました~!」


 音がする方向に行くと、ラヴェンとカインドが居た。

 ラヴェンが慌てた様子でこちらに一生懸命何かを訴えている。

 カインドは――


「めちゃくちゃ酔ってるじゃないですか!」


「んあ~」


 床にペタりと座り込み、明らかに酒が回っている。ラヴェンが慌ててしまうのも納得だ。


「部屋まで連れて行くしかないか。ラヴェンはどうする?」


 ラヴェンは首を縦に振った。

 一緒に行くということだ。


「ちょっと待っててね」


 ガウムはドールの元に向かった。


「ドールさん、カインド様を部屋に送ってきますね」


「分かったわ。行ってらっしゃい」


 再びカインドの元に戻る。


「んしょ!それじゃ行きますか」


 ガウムはカインドを抱き上げ、部屋へと向かった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 カインドの体は酒のせいか、火照っていた。

 ラヴェンが心配そうに着いてくるのが可愛い。


「ラヴェン、扉開けれる?」


 そう呼びかけると、ラヴェンはカインドの部屋の扉を開けた。器用な子だ。

 ラヴェンは部屋の中にある鳥籠に戻った。


 ガウムはベッドにカインドを寝かせる。護神が神の部屋に居座るのもどうかと思うので足早に去ろうとした。


「おやすみなさい、カインド様。……!?」


 ベッドから離れた瞬間、カインドに腕を掴まれた。

 あまりにも突然なことで、為す術なくガウムはベッドに倒れる。


「あ、ちょ、離してくださ……あ、カインド様?」


 ベッドに寝かせたカインドの眦には、涙が浮かんでいる。

 ガウムの腕を離さず、まるで子供みたいに。

 もう、こうなってしまうと部屋から離れられない。

 だって――


「――そんなに寂しそうな顔しなくてもいいじゃないですか、カインド様」


 彼の表情を見ていると、胸が苦しくなってしまって、どうしようもなかった。

 彼の頭を撫でると、少しばかり、表情が柔らかくなるような気がして。

 だから、ただただガウムには彼の頭を撫でることしか出来なかった。


 部屋の中には月明かりが差し込み、二人のことを照らしている。

 柔らかい月の光を浴びて心地良さそうに眠るカインドの顔を見ると、可愛らしい顔立ちだなと思う。寝顔だから余計だろう。


「ドールさん達、心配してるかなあ…」


 なんだかんだもう部屋に来て、一時間程経っている。


「あ、どうしよう……」


 ガウムは眠気に襲われた。

 多分、酒のせいだ。


「もう無理かな……」


 ここで、ガウムの意識は途切れた。

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