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神の歌  作者: おさかな
第一楽章 始まりの音
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第13話 「守誓式」

 城内、50人程が集められたこの会場で守誓式が行われる。

 白い花で飾られた、家1つ入りそうな程の大きさだ。


「こちらへ」


「ありがとうございます」


 衛兵に誘導され、最前列の真ん中で待機する。

 左には金色の髪の少女、右側には同じく金色の髪の少年が待機していた。

 少年はガウム同じ服を着用しているため、恐らくカインドの護神だろう。

 少女は衛涙星団といったところか。


「ドール様、テール様がお見えになる!」


「「「はっ!」」」


 衛兵の1人の声が響き渡ると同時に、会場内の全員が扉の方を向き、跪いた。

 あまりにも咄嗟の事にガウムは反応出来ず、立ち尽く

 すだけだった。

 そして扉が開き、ドール、テールが入場する。


「貴様!ドール様とテール様を前に無礼だ!」


 声を荒らげた衛兵がガウム近寄る。長身な男だ。さっきの声もこの男によるものだろう。


「下がれ、ヴェームズ」


「ドール様、しかし!」


「その子は世界の規則も、ほとんど知らないの」


「何より、私達の護神だから」


 会場内の空気が変わった。驚きに包まれている。


「っ!失礼致しました!」


 2人は壇上の椅子に座った。

 テールと目が合った。こちらを見つめ、小さく頷いた。その、心強い反応が頼もしい。


 隣に座っているドールの視線は、会場の後方に向いていた。

 ――その、ドールの瞳に、狂気的な何かが宿っているように見えた。


「カインド様、カルムア様がお見えになる!」


「はっ!」


 ドールの視線の先を確かめる暇もなく、再び声が響き渡った。

 ガウムも周りと同様に跪く。

 神や王族はこの会場の全員が跪くほどの人物なのだ、という事実を目の当たりにした。

 当然のことではあるが、ドールやテール、カインドやカルムアが他の人物と接触している様子をまだ見ていなかったガウムの瞳には、新鮮に映っていた。


 壇上に向かうカインドの肩にはラヴェンが乗っており、翼でカインドのことをつついている。遊びたいのだろうか。

 可愛らしいラヴェンは何故か乱稽古の時よりも小さく見える。

 そして、カインド、カルムアも壇上の席に着き、守誓式の準備が整う。


「これより、守誓式を行う!」


 ドールが式の始まりを告げる。

 会場内の空気が一気に張り詰めたものになる。

 事前にドールから大体の流れを聞いているため、ガウムに不安は無い。

 しかし、周りの人間の顔は強ばっており、ガウムのようにはいかないようだ。


 ヴェームズが前に出て、拳を掲げる。

 周りの衛兵は跪いている。

 すると、徐々に拳が光を帯びる。

 準備が整うと、ヴェームズは跪いた。


「神々、王族よ!我ら、衛兵が必ず守り抜くことをここに誓おう!」


「今回は足りていたのね」


 ヴェームズはこくりと頷く。


「下がれ」


「はっ!」


 衛兵達の番が終わり、次は衛涙星団、そして護神の番になる。

 場内の空気が先程よりも張り詰めている。

 しかし、周りの様子は気にせず、ガウムは伝えられた内容通りに式を進める。

 腰に提げた剣を引き抜き、掲げる。

 ――刹那、会場が驚きに包まれる。

 そして、隣に居る金色の髪と瞳の少女はピストルのような銃を掲げた。

 護神の代表であるガウムと同じく、彼女は衛涙星団の代表なのだろう。

 つまり、カルムアの星だ。

「星」とは、衛涙星団に所属する人間のことだと、ドールが式の前に話していた。

 会場内にも、何人かの星が居るようだ。

 3人程だろうか。

 星の数の割に王族の姿が見えないが。


 ふと、式の前にカルムアと話していたことを思い出す。

 彼女は自分の星について話していた。

「レンカ」という名前だったはずだ。


 レンカはちらりとこちらを見ると、ぱっと花のような笑顔になった。

 その笑顔がカルムアと重なって見えた。


 ガウム、レンカの2人が武器を掲げると、他の護神、衛涙星団、そして衛兵も跪いた。

 衛兵は護神や衛涙星団よりも位が低い。それが理由だろう。

 跪いている人物は皆、ガウム、そしてレンカの方を向いている。

 会場内で顔を上げているのは、ガウム、レンカ、そして壇上のカルムア、そして神々のみだ。


 掲げた剣が徐々に光を帯びる。

 これは、この会場に居る人間の「魂の片鱗」を集めているためだ。

 ガウムは護神の代表であるため、少年の魂の片鱗しか集めていない。

 この時点では、まだ自分自身の魂の片鱗は乗せていない。ガウムも、レンカもだ。

 それでも、剣は眩しいほどに輝いている。

 この輝きは元の魂に基づいていると、ドールに教えてもらった。

 隣のレンカを見ても、レンカを除く星達の輝きは、少年の輝きには至っていない。

 つまり、少年の魂が他の人とは比べ物にならないほどのものなのだ。

 衛涙星団、そして護神それぞれの魂の片鱗を集めた。最後に、自分自身の魂の片鱗を乗せなければならない。

 剣を強く握り、ドールやテールのことを思い描く。

 すると、場内が明るく照らされ、剣は目を焼くような輝きを放っている。

 周りの衛兵の何人かが気絶した。

 それでも、ドールは頷き、続けることを促した。

 それならば、従うのみだ。


 隣のレンカが掲げる銃も、先程よりも光が増している。それは、少年の輝きに匹敵するほどのものだった。


 ようやく準備が整った。

 ガウム、レンカの2人は前に歩み、それぞれが忠誠を誓うべき相手を見据える。

 そして、2人は跪いた。


「我ら衛涙星団、王族を守る為に命授けられしもの。必ず命は守り抜く。――もう誰も失いたくないの…」


 レンカは、震えた声で最後の言葉を紡いだ。

 その声はガウムにしか聞こえていない。

 彼女が抱えたものは、分からない。

 それでも、心が痛いのは何故だろうか。


 次は、ガウムの番だ。


「私達は護神。何があろうと貴方達を守り抜く。命を懸けてでも傍にあり続ける。――私がいる限り、貴方達の命は奪わせない」


 少年の分も、伝えられただろうか。


「下がれ」


 顔を上げると、ドールは「任せた」と言わんばかりにこちらを見つめている。

 その眼差しは、柔らかく、暖かい。でも、力強いものだった。


 ――場内が徐々に光で包まれる。


「私達も皆の誓いに応えよう」


 ――こちらを見つめるドールの表情は、自信に満ち溢れた笑顔だった。

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