第11話 「愛の眼差し」
「失礼します!」
乱稽古が終わり、汚れてしまった服を着替えてからドールの部屋に向かった。
扉を開くと、不思議な雰囲気の部屋が待っていた。
ドールの髪や瞳の色と同じ翡翠色と、この街や城を彷彿とさせる純白が基調となっている部屋は、彼女自身が持っている雰囲気の影響も大きいだろう。
「いらっしゃーい!」
出迎えてくれたのは、華やかな笑顔を浮かべたドールだ。ドールは部屋の窓際にある椅子に座っていた。開け放たれた窓から入り込む風がドールの美しい髪をなびかせる。
「早速、剣を選んで貰おうかな!」
「どれくらい剣があるんですか?」
「三十振りくらいかな!」
思っていた倍の数があり、ガウムは思わず目を丸くさせた。これほど数があると迷ってしまうだろう。
「ちょっと待ってね」
そういった直後、ドールの目の前にたくさんの剣が現れた。
現れた剣は綺麗に並び、ふわふわ浮いている。魔法によるものだろう。
「どれがいい?」
たくさんの剣がある中、一際輝く剣を見つけた。
少し幅が広い、透き通る青空のような水色の刀身。輝く白い柄。装飾は一切無い。否、この剣に装飾など必要ないほどに美しいのだ。
その剣にそっと近づき、優しく手に取った。
初めて握るはずだ。それなのに、懐かしくて。
「この剣にします」
「分かったわ!」
そう言ってドールは真っ白な剣の鞘を手渡してくれた。
「やっぱり貴方のままなのね」
柔らかい笑顔を浮かべたドールが呟いた言葉はガウムに届かず、散っていった。
「明日式典があってね。だから剣を選んでもらったのよ」
「前に言っていた大きな仕事ってこの事ですか?」
「ええ、そうよ」
確か、ドールはその式典に護神や衛星が集まると言っていたはずだ。
「守る対象の位が高いほど、その護神や衛涙星団の位も高くなるわ。つまり、護神の中ではガウムが1番偉い立場よ。だから明日は大事な役割を果たして貰うわ!」
「大事な役割…?」
「代表して誓うの。守る対象にね」
代表して、ということはドールやテールだけでは無いはずだ。対象がどれだけいるかはわからない。しかし、ドールやテールを守ろうという気持ちを誓えばいいだけの話だろう。真っ直ぐに、誓えばいいのだ。
「誓いは凄く大事でね。誓いを行うと繋がりを結びつけることが出来るの。護神や衛涙星団と守るべき者を結ぶ代表なのが貴方、ガウムよ」
「大切なお仕事、私がやらせてもらっていいんですか?」
「"ガウムだから"やって欲しいんだよ!」
満面の笑みで言ったドールの言葉はただただ嬉しいものだった。ガウムの笑みが溢れたのを見て、ドールも自然と柔らかい笑みになる。
「大切なお仕事、全力でやらせていただきます!」
「頼んだわよ!」
誓いとは、具体的に何をするのか分からない。だが、きっと大丈夫だ。ドールが背中を押してくれるのだから。
「ドールさん、ありがとうございます!」
ガウムからの言葉に、ドールは愛おしそうにこちらを見つめていた。