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神は巫女の頭に宿る  作者: 榊 雅樂
第四章 ?
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七十八話 利点ではなく

 ある程度話し終えたところで、招集は一時解散。今、望緒は子どもたちと八下で集まっている。


「––––で、どういうことなの? あの本を火夜が置いたのかもしれないって……」


「ほんとに、ただの勘なんだ。そもそも、火夜は死んでるはずだから、置けるはずはないんだけどな……」


「それを大人には?」


 日向が八下に問う。


「もちろん、言った。今、お前のとこの当主が本があるかの確認に行ってくれてるよ」


 八下がここにいるのは、あまりに顔色が悪かったため、外にいた方がいいということだった。

 たしかに、望緒が彼を見た時、どこからどう見ても顔色がいいとは言えなかった。


「まあ、正直そこは俺ら役立たへんから、大人に任せるとして。八下様は一体、どこ住む気なん?」


「え……ああ、どうしような。前は屋敷みたいなのがあったけど」


「その屋敷、もう無いんとちゃう?」


 爽玖の発言に、一同は黙る。


 彼の言っている屋敷は、恐らくもうない。あったとしても、残骸がある程度だろう。あったというのは、もう千年近くも前の話。

 今までの“八下の存在”というものを考えたら、残されているとは、到底思えない。


「まあ、そこら辺の竹藪たけやぶとかで過ごせば––––」


「いやダメだよ?」


 望緒は、野宿をしようとする彼を当然のように止める。一体、どこからその発想が生まれてくるのだろうか。


「あの、許可取ってないんで何とも言えないんですけど、うち住みますか?」


 その発言に、皆は振り向く。発言の主は飛希だった。しかし、それを遮るのは闇戸。


『なぜだ、出水に住めばいいだろう。我の傍にいればいい』


「はあ? 何言うとんねん。つか、話遮んなや」


『知ったことか。同じ神の元である我といた方が––––』


「闇戸、一回黙って」


 八下が言うと、まだ何か言おうとしていた闇戸が、黙り込んだ。爽玖は感心したように、


「うわすご……あんなクソ我儘な闇戸を一瞬で黙らせた」


「それで、飛希だったか? お前が俺を家に置くことの利点は、正直ないと思うんだけど」


「利点がどうとかじゃなくて、単に見知った人がいる方がいいと思って。出水でも闇戸様がいますけど、人間の方は全然知らないでしょう?」


 見知った人というのは、望緒のことだろう。家にいるというのなら、気軽に話せる者は必要。だから、飛希はこの提案をした。


 出水には闇戸がいるが、彼は基本的に滝に住む。八下が過ごすのは家のため、一緒にいることは、現実的ではない。


「だから、石火矢うちに泊まったらいいと思ったんですけど……」


「真澄さんたちがいいって言うんなら、私もいいと思う。八下は?」


「まあ……泊まらせて貰えるんなら、それはありがたい限りだけど……」


「じゃあ、決まりですね」


 あとは、雄太郎や徳彦たちに、許可を取るだけ。しかしまあ、闇戸は不服そうである。それを、爽玖は笑いながら慰めた。


 そんな中、千夏がててっと望緒の方へ駆け寄ってきた。そしてそのまま、彼女に抱きつく。


「どうしたの? つまんない?」


「んーん、ちゃう。久しぶりに望緒に会えたから」


 甘えたような声。先程から一言も話していなかったが、何かあったのだろうか。


「あー悪い。今そいつ疲れとんねん」


「疲れてる? 招集があったから?」


 あの場は、誰にとっても堅苦しいと言える場所だった。十五歳でかつ末っ子の千夏にとっては、疲れる場所でもおかしくはない。


「それもあるんやけど、最近は鍛錬をよう頑張っとってさ。その疲れがどっと来たんやろ」


「そうなの」


「千夏、ほら戻ってこい。抱きつくんなら俺でもええやろ」


「嫌や。お兄ちゃんの身体は硬いもん」


「お前な……望緒にあんま迷惑かけんな」


 そう言って爽玖は、望緒から千夏を引き剥がそうとする。が、千夏は望緒の着物をガッチリと掴んで離れない。

 無言の抵抗だ。


「さっくん、私は大丈夫だから。好きにさせてあげてよ」


 望緒が言うと、爽玖は不服ながらも、納得したように千夏を掴んでいた手を離した。


「千夏ちゃんかわい〜。あたしも望緒ちゃんに甘えちゃおっかな〜」


 朝陽がおどけて言うと、千夏は頬をハムスターのように膨らませ、不満を全力で表す。それに朝陽はケラケラと笑った。


「あはは、睨まれちゃった」


「望緒さん、面倒見いいですね」


 藤花が意外そうに、そう口にする。


「一応お姉ちゃんでしたからね。……ほんとに一応」


「なんかすみません……」


 疎まれてはいたが、望緒は一応姉である。嫌われていたから、面倒を見たことは、片手で数えられる程しかないが。


「あの……僕の名前、よく知ってましたね。招集の時にも、別に呼ばれてはなかったと思うんですけど」


 飛希は、そう八下に質問する。


「望緒から、何回かお前の話聞いてたからさ。話の内容からしても、お前のことだろうなって」


「お、お世話! お世話になってるからね! 石火矢の話題はいっぱいあるからさ!」


 望緒は恥ずかしさからか、顔を真っ赤にし、誤魔化すようにまくし立てた。

 それを、朝陽だけは笑みを抑えきれずにいる。バレないように口元を手で覆っているが、望緒本人にはバレバレだ。


「……そうなんだ」


 飛希は、何とも言えない表情をしていたが。


 そんなやり取りをしていると、爽玖たちの父親である、碧人が、戻ってくるようにと言いに来た。

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