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あの時の後悔


「………」



遺跡の上から、静かにマモン達を見つめる人影が一つ。

その人物は、呆然と佇むマモンの姿を見て微笑むと、遺跡から飛び降りマモン達の元へと向かった。



「誰だっ!!」



いち早く気づいたのが、エミル。

声を上げれば、残りの者たちもエミルの視線の先へと目を向ける。


そして、茂みの中から現れた人物に……リアとリディスは声を上げた。



「先生っ…!」


「師匠!?」



驚きと戸惑い。けれども二人の瞳には期待の色もあった。二人からしたらミルキーは尊敬に値する存在。


二人がミルキーの元へと駆け寄ろうとすれば、それをエミルが阻止した。

そんなエミルの行動に驚く二人に、エミルは言う。



「……誰しも簡単に味方だとは思ってはいけない。それが例えどんなに尊敬している相手でもね」



エミルの言葉にリアとリディスは驚く。

そして同時に、ミルキーへと視線を再び向けた。



「命の恩人に言う言葉じゃないと思うが?」


「確かにそうかも。けど、今回は話が違う」



普段ヘラヘラとした態度しかとらないエミルの真剣な表情と眼差しに、その場に居た皆が息を飲んだ。


緊張感が走る中、その緊張感を打ち破ったのは、マモンだった。



『………久しぶり。ミルキー』



目を細め、小さく微笑むマモンに、ミルキーは固まる。



『久々の再会なんだし、もう少し喜んでよ。て言うか、その格好どうしたの?』



マモンはミルキーの耳を見て驚く。

何せ、ミルキーはマモンの中では人間として認識していたのに、今のミルキーはエルフの耳を持っているのだから。



「俺のことはどうだっていい! それよりユア、お前、その体の居心地はどうだ?」



『…………何でそんな事聞くの?』



「俺、ずっと後悔してたんだ。あの時、お前を助けられなかったこと。ずっと後悔してたんだ! そんな時、お前を助ける方法をエルフに教わったんだ!」



『まさか教わる代わりにお前、エルフになったの……?』



「あぁ、そうだ!」



『そう。……で? そのボクを助ける方法ってのは、他人の身体を乗っ取る……ってこと?』



「……そうだ」



ミルキーの言葉に、ルーンが鞘から剣を抜いた。


許せなかった。

私情で関係の無い他者を……アンジェを巻き込んだ事に。


しかし、ルーンよりも先にとある人物が、ミルキーへと攻撃を仕掛けていた。


その人物は目にも留まらぬ早さで風魔法を使い、ミルキーを後方にあった大樹へと突き飛ばす。



「酷いなぁ………リア」



そう言ってミルキーがリアへと微笑みかければ、リアは唇を噛み締めた。

そして大きく深呼吸をすると、ギロリと鋭い目付きでミルキーを睨み付けた。



「私は先生のことを尊敬してます。そして何より感謝してます。だってアンジェがこうして十五歳まで生きていられたのは先生のおかげだから。あの日、貴方がアンジェの命を繋ぎ止めてくれたからです。でもそれは………アンジェの為じゃ無かった。先生。貴方にとってはアンジェはただの道具に過ぎなかったんですか…?」



リアの瞳から大粒の涙が溢れ出す。


ミルキーを信じたい。

だって、大切なアンジェの命を繋ぎ止めてくれた恩人。そしてリアの初恋の人でもある。


アンジェの命を救い、そして大切なアンジェの為に豊富な知識を用いて尽くしてくれた。

そんな姿に、リアは心を奪われたのだが……。



「………許せない。アンジェを利用しようとしていただけなんて…!」



「リア。君も俺と同じ立場だったら同じ事をすると思うけど?」



「…そうかもしれません。けど、アンジェは絶対にそんな事望まない。誰かの身体を奪ってまで自分が生きる、だなんて!」



そうリアが声を上げた時だった。



『ボクも……アンジェのお姉サンと同意見。人の身体を奪ってまで生きる意味なんて無いよ』



マモンが………いや、ユアが苦笑を浮かべ、ミルキーへとそう告げた。





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