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元気な姿で


そして遂に早朝となった。

宮廷専属魔導師団の制服に身を包むエミル、ルーン、リア。そしてリディスとカイン。


フローラは久々に見たカインの制服姿に心臓が跳ね上がる。

まさかもう一度カインの魔導師団姿が見れる日が来るとは……。



嬉しさに頬を緩ませたあと、フローラはアンジェの元へと向かった。



「グレジス副団長」



するとそこには、アンジェの手を優しく握る、ルーンの姿があった。


ルーンはフローラの存在に気付くと、深々と頭を下げた。



「すいません。もう出発時間ですよね。準備は出来てます」



「そう……」



フローラは小さく頷くと、アンジェのもとへと寄る。

そして、今にも溢れ出そうな涙をグッと堪えて……微笑みを向ける。



「行ってくるわね、アンジェ」




▢◇◇◇◇▢▢▢▢◇◇




「森までの移動はドラゴンに乗って移動する」



公爵邸から出るなり、エミルが突然そう告げた。


ドラゴン。

それはモンスターの中でも最強クラスの強さを誇る生き物。

まず人間が手懐ける事なんて不可能に近い。



はるか昔に、ドラゴンを移動手段として使用していた……と言うのは誰もが知る事実。

しかし、現在ではそんなのおとぎ話だと思われている。



そんなドラゴンに乗って移動…。

まず、何処からドラゴンを連れて来るつもりなのか…。



「て言うかそもそも……私、ドラゴンになんて乗れないわよ」



フローラの問にエミルが笑顔で答える。



「カイン、フローラ様は任せて大丈夫か?」



「勿論。だが、俺もドラゴンになんて乗ったこと無いんだが……」



「まぁ、指揮はオレがとるから安心して遊覧飛行を楽しんでおくだけでいいよ」



そう言ってエミルはフローラに笑みを向けた。

しかも、かなり意味深の……。


フローラの顔がブワッと一気に赤く染まる。

どうやらエミルは、フローラのカインへと抱く恋心に気づいていたらしい。


フローラが顔を真っ赤にしたまま、エミルの腹部へと強烈な一撃を食らわせる。



「エミル…! 余計な事言ったらタダじゃ済まさないからねっ…!」



「解雇は嫌なんで黙りマース…」



「……それで!! ドラゴンで移動するって言ってたけど…肝心のドラゴンは何処なのよ!!」



頬を膨らませ、ご立腹の様子のフローラにエミルはまぁまぁ、と宥めていると……。



「まぁ、見といて下さいよ」



エミルの瞳が真っ赤に染まる。

それと同時に彼の額に広がる禍々しい文様。

それはアンジェの患う魔文の呪いの文様と似ている様で似ていない様な……そんな文様だった。



エミルに文様が現れた……それが合図だったかのように突然地面に魔法陣が現れた。

そしてその魔法陣から三匹の飛竜が姿を表した。



「オレとリッちゃん。ルーンとリア。カインとフローラ様で別れて乗ろう。落ちないようにドラゴンに捕まってるだけで大丈夫だから」



一体何が起こったのか……この場にいた誰もが理解出来なかった。

ただ取り敢えずとんでもないモノを見てしまったという事だけは理解出来た。



「さぁ、皆出発するよ」



エミルの言葉に力強く頷くと、ドラゴンへと続々と乗っていく。


最強クラスの強さを誇るモンスターと言われるドラゴンが目の前にいる、と言うだけで緊張と恐ろしさが走るが、今目の前にいる飛竜は大人しく、穏やかな顔立ちをしている為か全くもってそれらの感情を抱く事は無かった。




そんなフローラ達の姿を、静かにベッドの上から見つめる一つの視線。


その視線の主はゆっくりと体を起こすと、小さく「お願い」と呟いた。


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