知らせ
リアはフリーマーケット開催日までフローラの元で魔法道具師として勤務する形となった。
魔導師団の控え室の私物を片付けてくると、リアは一度席を外す。
その間、アンジェはフローラに申し訳なさ気に話し始める。
「フローラ様。フリーマーケットの件、本当に申し訳ございません」
当初、フリーマーケットに参加する理由はフローラが自信を付けるためのものだったのだ。
それが一気に壮大な目標へと姿を変えた事にアンジェは申し訳なさを感じていたのだ。
フローラは肩を落とすと、優しく微笑む。
「別にいいわよ。早めの宣戦布告ってところだから。それに……と、友達の為だもの頑張るに決まってるじゃない」
そう言ってフローラはそっぽを向いた。
よく見れば顔は赤く染まり、まるで林檎のようになっている。どうやらそんな顔を見られないようにそっぽを向いてしまった様だ。
アンジェはそんなフローラに「ありがとうございます」と伝えた。
自分の為に一肌脱いでくれたこと。
そして…自分を友達だと称してくれた事。
感謝と喜びで一気に感情が溢れかえりそうになった。
「もうこの話はお終い…! 早速新作の話し合いをするわよ!」
「はい。王太子殿下が羨むような魔法道具…。正直、かなり難しそうですけど、頑張りましょう!」
「お兄様が制作した作品よりも高性能の物を作るのも良いと思っているんだけど……どうかしら? あ、勿論私にしか出来ない様な物も作るつもりよ! もういっそ全部作っちゃうしかないわね……!!」
こうして、フリーマーケットへ向けての魔法道具作りが開始された。
▢◇▢▢◇◇◇◇◇
「最近、フローラ様は元気か?」
宮廷図書館にて、アンジェが本棚の整理を行っていると、カインが少し不安気な様子でそうアンジェに尋ねた。
「はい、元気にしていらっしゃいますけど…」
「どうしても気になってしまって……。嫌われている事は分かっているんだ。けど、俺の中でフローラ様はずっと守るべき御人で……つまり、大切な人だから」
(フローラ様に直接聞かせてあげたかったな
……)
きっと今の言葉を聞いたらフローラは顔を真っ赤に染めて踊り狂う様に喜ぶだろう。
まだカインの隣に立つには相応しくないの一点張りだが、アンジェからしたら十分フローラはもうカインの隣に並ぶのに相応しい女性になっている様に思える。
(寧ろ私の方が……)
本棚へ手を伸ばす。
すると、騒がしい足音が突如図書館に響き渡った。
「大変ですっ!!」
足音の主は宮廷専属魔導師団の団員の者だった。
顔色を真っ青にし、汗だくになった団員。
カインがそんな団員にいち早く駆けつけ、尋ねる。
「どうした? 何かあったのか?」
「グ、グレジス夫人は……いらっしゃいまふか?」
「あ、はい…。私です…けど」
魔導師団の団員と目が合う。
顔が真っ青で、汗だくだ。
息も上がっていて、必死に彼は肩で息を整えながら言葉を紡いでいく。
「大変です…! グレジス副団長が……!!」
団員の言葉に今度はアンジェが顔を真っ青にする番だった。




