表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/93

お城を抜け出して


まだ朝日も登っていない様な時間。

アンジェはお城の裏口から王城へと入ると、フローラに貰ったネックレスでフローラの部屋へと移動する。


なぜこんな早朝にアンジェがフローラの部屋へとやって来たのか。

その理由は━━━



「アンジェ。漸く来たのね。待ちくたびれたわよ」



「おはようございます、フローラ様。本当に申し訳ございません。少々支度に手間取っていまして」



「責めてる訳じゃないから別にいいわよ」



「フローラ様はグレジス夫人の身に何かあったのでは無いかと不安だった様なのです」



「ちょっとベル!? 一言余計よっ!?」



顔を真っ赤にして声を上げるフローラに、アンジェは笑う。


ベルは何故自分が怒鳴れているのか理解していない様だが、こっそりアンジェはフローラの今の心境をベルへと耳打ちしておいた。



「もうこの話は終わりよっ! それでアンジェ! 今日は、遂に実行するのよね!?」



「はい! 先日話した通り、今日は遂に実行しますよ!」



アンジェの言葉にフローラがゴクリと息を飲む。



先日、アンジェがフローラに話したこと。

それはダイエットを兼ねて自然との交わろう、というものだった。


その内容は至ってシンプルである。



「フローラ様に頂いた収納ボックスに庭師の方から借りた道具。また頂いた花の種とレンガがあります。これで花壇作りをしましょう」



アンジェの言葉にフローラは力強く頷く。


以前なら外に出る事なんて絶対に有り得ない話だった。

けれど、自分を変える為にフローラは少しずつでも成長していこうと思った。

そう思えたのはアンジェとベルが背中を押してくれたからである。

少しの成長でも優しく受け入れ、応援してくれる二人の存在がフローラの背中を押しているのだ。



とは言っても、流石に人目はまだ気になる。

そこで早朝。まだ誰も起きていない様な時間に活動する事にしたのだ。



「じゃあ、早速移動しましょうか」



「因みに花壇を作る場所は任せなさい、とフローラ様は仰っておられましたが、何処なのでしょうか?」



アンジェが首を傾げて尋ねれば、フローラはニッと白い歯を見せて言った。



「行けば分かるわよ」



フローラはそう言うと、机の引き出しからとある箱を取り出した。

そして箱から一つの鍵を取り出すと、その鍵を持ってドレッサーへと向き直り、フローラはアンジェを手招する。


フローラは鍵をギュッと力強く握り締め、唱える。



『*❖❖◇▢**▢❖❖❖』



アンジェにはフローラが発している言葉が理解出来なかった。人語なのか、それとも……。


フローラが呪文を唱えると共に、鏡が眩い光を放ち始めた。

そしてその光は、アンジェ達を優しく包み込み、鏡の中へと引き込んだ。



「アンジェ。起きなさい」



「フローラ……様?」



フローラの声にアンジェは意識を取り戻す。

そしてゆっくりと体を起こすと、目の前に広がる光景に目を見開いた。



「あの、ここは一体…」



アンジェの視界に広がる光景。

それは無限に広がる大地と草花。

そして大きな大樹と、その隣に小さなレンガ造りの家が一つ建っている。



「ここはお爺様…つまり、先代の国王陛下が私へと残してくれた秘密の隠れ家よ」



フローラはそう言うと、微笑んだ。

しかしその笑顔は決して晴れた笑顔では無い。

曇り空から今にも雨が降りそうな…

そんな笑顔であった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ