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王太子殿下


「先生が病気を治療してくれたって事ですか!?」



「うん、そうだけど……ふーん、なるほどねぇ」



エミルは品定めをするかのような瞳でアンジェのつま先から徐々に上へと視線を流していく。


その視線に居心地の悪さを感じつつも、エミルが何かに気付いたようなので我慢する。



「やっぱり。上手く隠せてるけど、オレは分かっちゃうんだよね~?」



「……だ、旦那様にも気付かれてしまうでしょうか?」



「もしかしてルーンには病気のこと秘密にしてるの?」



アンジェは小さく頷いてみせる。

その反応に成程、とエミルは思う。


魔導師団の団長を務める彼でさえ気づきにくいアンジェの中にあるマモンの存在。

それをルーンが気付くことは恐らく無いだろう。


しかし、何故夫婦でありながら病気の事を打ち明けていないのかエミルは疑問に思った時だった。



「っ……!!」



エミルは思わず後退りした。


額に冷や汗を伝わせる彼に、アンジェは心配し、大丈夫ですかと尋ねる。


ゴクリと息をのみ、エミルはニッと白い歯を見せる。

どうやらアンジェは気付いていない様だが、エミルはその気配を察知した。

そしてその気配に思わず驚いてしまったのだ。


なにせアンジェの中から感じる気配。

それはかつて自分の中にあった気配よりも更に濃い、禍々しい凶悪なものだったからだ。



しかし、その気配は一瞬にして姿を消した。

どうやらエミルを威嚇する為に現れた様だ。


アンジェの中に潜む者…マモンの存在をエミルは知らないが、アンジェがルーンに病気のことを打ち明けないのは何か理由があるのだと直ぐに察した。

そしては恐らくアンジェの中に居る気配のせいであるとも。



「ルーンにはアンジェの病気のこと、黙っておいてあげる。けど、何かあったらオレに直ぐに相談すること。力になれる事は必ず有るだろうからさ」



「……では、早速いいですか?」



「ん、なぁに?」



「実は魔文の呪いについて知りたいんです。取り敢えず魔文の呪いが初めて確認された時期とか、歴史とか」



「あー。ミルキーに聞くのが一番だろうけど、あの人何処に今居るのか分からないしなぁ…。それと魔文の呪いは一般的には知られてない病だ。そう言うのは恐らく第一王子……つまり王太子が保管してる書庫にある。て言うかあるね。あの人、珍しいものが大好きだからさ。魔文の呪いの事も調べてたよ。だってオレ、王太子殿下に魔文の呪いを患っていた時の話を聞きたいって付きまとわれてたからね」



「ではその書庫へ行くことって…!」



「んー。オレだけの力じゃ無理だね。所詮俺はただの団長だから」



エミルはそう言うと口惜しそうにアンジェから目を逸らす。

自分から相談しろ、と話しておきながら力になれなかった事がどうやら申し訳ないらしい。



「あ、けど。リッちゃんに頼んで貰ったらもしかしたら見せて貰えるかも…」



「え、リディスですか!?」



一体何故リディスがここで出てくる?

だってリディスは至って普通の医者の卵だ。特別な事があるとすれば薬学の知識を持っているぐらいで…



薬学の知識



「もしかして!?」



「そのもしかしてだよ。何なら多分今頃リッちゃん王太子殿下に質問攻めにされてると思うよ? オレがリッちゃんは薬学の知識があるって話した途端、王太子殿下目を輝かせてたからね」



この世界の病気は大抵治癒魔法で治ってしまう。

だから薬学の知識なんて誰もが不必要だと思い、蓄えている者なんて普通居ない。

だが、リディスは違う。

幼い頃からミルキーによって薬学の知識を叩き込まれている彼は、王太子にとって強く興味を示されたに違いない。



「あとこれはオススメはしないけど、リッちゃんのお願いでも聞いてくれなかった場合はアンジェ自身を提供すればいいと思う」



「あの…それはどう言う意味でしょうか?」



あまり良い意味では捉えそうに無い言葉にアンジェは少し引き気味で告げる。



「変な意味じゃないからね!? ただオレはもしもの手段で、アンジェが魔法を使えない事を王太子に話してみたら良いと思ったの!

魔法が使えない人間なんて滅多に居ない。きっと王太子は興味を持たれるだろうから」



「…そう言うことですか」



「そうだよ。けど、これらオススメじゃないよ。何より…王太子殿下がアンジェが魔法を使えない事を知って興味を持たれたらルーンが怒るだろうしね」



何故ここでルーンの名前が?

それと何故ルーンが怒るのだろうか?



(やっぱり旦那様、私が魔法を使えないこと……恥ずかしく思ってるのかなぁ)



ルーンは魔法の天才達が集う宮廷専属魔導師団の副団長だ。

そんな彼の妻が魔法が使えない真人間だと言うのは、やはり恥と思っているのかもしれない。



(駄目よ私! 何弱気になってるのよ! 今は王太子殿下の持っている魔文の呪いについての情報を手に入れる事に集中しなと…!)



アンジェは自分の頬を叩き、に喝を入れた。





一方その頃、地下の書庫にて王太子、ルツが側近からとある資料を受け取っていた。

その資料に綴られていたのは、アンジェの詳細な情報であった。



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