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双子座流星群

作者: 眞基子

 リョウとショウは元気いっぱいの双子の男の子。ハイハイしだすと先を争ってママの膝に座り、幼稚園バスを降りると先を争ってママに抱きつくのです。おやつの時も先を争って手を出すというように、物心がついたときから二人は先を争っていました。でも、小学三年生になって少しづつ相手を思いやる気持ちが芽生えてきました。もちろん男の子。取っ組み合いの喧嘩が始まると、ママの大声が聞こえるまで続いてしまいます。でも、相手がすりむいて泣いていると、フンとばかり横っちょを向いていますが、内心ごめんと謝っているのです。学校で兄弟がいじめられていると、どんなに強い相手にでも向かっていきます。双子の男の子には、嬉しい時も悲しい時もお互いの気持ちが分かるから。

 ある日、ママは二人に星座の本を見せてくれました。そこには、たくさんの星座がありました。おおくま座やオリオン座などの星座が絵とともに書いてあります。ママは、ふたご座を指さして言いました。

 「ほら、これがリョウとショウの星座よ」

 二人はそろって星座を覗き込みました。

 「本当だ。ぼくたちみたいに二人で並んでいるね。じぁあ、ママの星座はどれ」

 ママはまた、ふたご座を指さして言いました。

 「ママの大好きな星座よ。ママの星は、ふたご座の中で一番輝いている星。ずっと、リョウとショウの中にいる星よ」

 やさしく抱きしめてくれたママの目が、少し濡れていました。

 数日して、二人が学校から帰ると、「おかえり」のママの声が聞こえません。買い物に出ていても二人が帰る頃には、「おかえり」の言葉が聞こえてくるのに。二人は心細くなって家中を見て回り、それでもいないと台所のテーブルのイスに座って、ママの帰りを待ちました。玄関のドアが開く音で、二人は大慌てで玄関に行きました。でも、そこにいたのはパパでした。そして、パパは両手で二人を抱きしめました。それからママが病気になって入院したこと、おばあちゃんが来てくれることを言いました。

 「大丈夫だよ」

 パパは自分に言い聞かせるように、二人を抱きしめている手に、力を入れました。

 二人の日常は、少しずつ変化していきました。やさしいおばあちゃんが来てくれたので、家の掃除や洗濯、ご飯もおいしく作ってくれます。でも、ママの「おかえり」の声は聞こえません。ママの大声も聞こえないので喧嘩もしません。今まで別々の布団で寝ていた二人は、いつしか同じ布団に寝るようになりました。

 ある日曜日、パパはママが入院している病院に連れて行ってくれました。ベッドに寝ているママは少し痩せていたけれど、やさしい笑顔で二人を見つめ、手を伸ばして二人のホッぺをやさしくなぜてくれました。そして「ごめんね」って、つぶやきました。二人は久しぶりにママに会ったので、「ママ、ママ」って言いながら泣いてしまいました。

 「泣かないでね。ママはいつでもリョウとショウのことを見てるから。そうだ、今度お空にふたご座を見つけてちょうだいね」

 ママは微笑みながら言いました。

 しばらくすると、ママはお星様になりました。

 

            『お空のママにラブレター』

 「お母さん、空の上から、僕達が見えますか。あれから三年、僕達は四月で六年生になりました。もう、泣き虫の僕達ではありません。お父さんもおばあちゃんも元気です。お父さんは、時々お母さんの写真を見て寂しそうにしていますが、僕達が付いているから安心して下さい。あれから僕達は、地域の少年サッカーチームに入りました。試合の時は、お父さんもおばあちゃんも応援に来てくれます、おいしいお弁当を持ってね。それから監督から二人とも筋がいいと褒められたよ。二人で日本代表になれるように頑張るから、空の上から応援してね。

 今年、お父さんと一緒に三人で山に登りました。そしたら東の夜空に双子座が輝いて、たくさんの流れ星が見えたんだ。双子座流星群は、まるで僕達の上に降りそそぐようだったよ。きっと、お母さんが僕達を抱きしめてくれたんだね。寒い夜だったけれど、二人ともあったかい気持ちになったもの。お母さん、僕達を双子に産んでくれてありがとう。二人なら、これからどんなことがあっても、立ち向かう勇気が湧いてくるから」

              リョウとショウより       

 


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