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聖女として異世界召喚されましたが、お約束のチート能力がないんですけど!?

作者: 桜ノ牡丹


 初投稿です。設定はかなりのゆるゆる、ご都合主義です。ごめんなさいッ!






 日比野六華、24歳。高校卒業後、新卒としてアパレル会社に就職しショップ店員として、普遍的な日常を送っていた。仕事場では副店長を任されるようになり、職場の人とは当たり障りのない関係を結んでいた。シフト制により生活リズムは不規則だったが、元より社交関係が明るいほうでは無かった為、友人や恋人と時間が合わないという事を言い訳にして、自堕落な生活を送っていた。

そんな六華の唯一の楽しみは、夜な夜な読む今はやりの異世界小説。昔からファンタジー小説が好きな六華だったが、現実世界に通ずる設定がありつつ、チート能力によって主人公が華々しく活躍していくストーリーは快活な気分にさせてくれるのだった。



 「ふぁぁ~、異世界転生最高。でも最近の悪役令嬢物も捨てがたいわー。あの逆境を思考の柔軟性と発想力で腹黒ヒロインを跳ね返してく痛快さと華々しさ。――しかも、スペック良し、顔面良し、プロポーション良し。待っているのは麗しいメンズ達の逆ハーレムパラダイス……、〈天は二物を与えず。〉って言うけれど二物、三物どころじゃな~~い!!」



 ご近所様迷惑よろしく、スマホを片手にクッションを握りしめ6畳ワンルームのベッドの上でのた打ち回る。



 「高スペックなイケメン貴族様、私を異世界に連れ去って下さーい!…なんてね。はぁーぁ、明日は朝一から会議だしさっさと寝よっと。」





―――――――――――――――――――――――――


 



 まぶしい光を感じて目が覚めた。あー、よく寝たなぁ。なんて思いふと頭が覚醒する。私、今日会議!と勢いよく起き上がりベッドから這い出し飛び降りようとした途端、ドタン!という大きな音を響かせベッドから落ちた。床に伸びながら、あれ、こんなにカーペットって赤色だったっけ?それになんかベットの背が高い気がするんですけど…。そこで漸く頭を起こせば見覚えのない光景が映ると同時に何処からか人が駆けてくる音が聞こえてきた。



 「聖女様!今鈍い音が聞こえたのですがご無事ですか?」


 

 開いたドアから入ってきたのは、黒いワンピースに白いエプロンを纏った所謂メイド服を着た若い女の人で。瞬きをしても目を擦っても映る景色は変わらなくて、取りあえず目の前に差し出された腕をとり起き上がることにした。



 「あ、ありがとうございます。…気づいたら此処にいたのですが、ここは一体何処なのでしょうか?」

 「ここはハーゲンベルグ王国でございます、聖女様」



 へー、ハーゲンベルグ王国ねぇ。…って、メイドさん私の事、聖女様って言った?え、何、新手の詐欺?それとも拉致?それともまさかのまさかの…、異世界に来ちゃった系ですか⁉





―――――――――――――――――――――――――





 それからあれよあれよと祀り上げちやほやされたのはたったの一か月くらいだった。



 メイドさんに身支度され、キラキラの俺様王子様や知的宰相様はじめ、ワイルドお兄サンの騎士団長様やらお色気むんむんの神官長様やらここは乙女ゲームですか!?と言わんばかりの人達にお目見えしたり、お披露目パーティーやら…




 そう、異世界モノにはつきものなのは容姿の端麗さ。

真っ白な肌に、淡くて甘いミルクティーみたいなふわふわの髪、とろりと溶けた蜂蜜色のぱっちりとした瞳。小柄で華奢な身体…(胸は…少しさみしい、いやかなり?…ゲフンゲフン)。この世界ではあまり珍しい容姿ではないが、日本人だった私からするととっても可愛いらしくてご満悦だ。事実、出会った人には「可愛らしい」だの、「人間かに迷い込んでしまった妖精のようだ」と褒められた。



 そして肝心のチート能力!これが問題だった。


 この世界にも聖女は居るらしく、聖女の能力を測る神殿の中にほかの部屋に比べると小さめな円形型の部屋があった。天井にはガラスがはめ込まれ陽の光が降り注ぎ、中央には胸丈くらいの天然水晶のような透明の岩石が突出していた。

 神聖さを感じる空間に思わず見惚れ足を止めると、神官長に恭しく手を取られ水晶の前まで連れられ、手を水晶に触れるように声をかけられた。


 思わずゴクりと唾を飲み込み、恐る恐る水晶に触れると手のひらにひんやりとした感触が伝わってきた。

王族と神官長に見守られ、静寂な時間が流れる―――――――…。

あれ、何も起こらないんですが、だれか状況を説明してください!…沈黙が辛いです!




 そうなんです、説明しなくてもお察し頂けると思うのですが、能力0だったんです!私、泣いてもいいですか?いいですよね、ぐすんぐすん。憧れのチート能力0ですよ。




 神官長の説明によると、水晶に触れることが出来た時点で聖女としての資格はあるそう。資格がないものが触れようとすると見えない何か壁に弾かれるらしい。そもそも異世界から突然やって来る聖女は(直前に神官長に神託があるらしく、私がやって来るのも事前に分かっていたらしい)、この世界の聖女と比べ遥かに能力が高いらしく、存在するだけで国に平穏と発展をもたらすらしい。水晶に反応が無かったのは高すぎる能力故という事でその場では一旦解散となった。



 後日、あてがわれた王城の部屋で聖女としての能力の扱い方を教わっても大した才能は見えず。この世界での聖女と比べてもふつう位しか無かった。まだ能力が目覚めきれてないのではと、日々鍛錬すること一か月。なんの変化も見せない私に王城の使用人からは冷ややかな視線を浴びるようになり、期待を削がれた王族が神官長に私を押し付けた。神官長も神官長で王族の手前異世界からの聖女を放り出す事も出来ず、神殿の一室をあてがわれそこで生活するように告げられた。

 




―――――――――――――――――――――――――





 そして、早3年。



 神殿では神官やらこの世界の聖女や聖女見習いから’’王族から押し付けられた厄介者’’として遠巻きにされながらも、寝る間も休む間も惜しまず必死の修行と努力を積み重ねた結果(…と言えば聞こえはいいもの、平たく言えば良いように扱われただけ)やっと、まともに能力が使えるようになり周りから’’本当に異世界から来た聖女’’と認識されはじめた。



 そして私の成長を耳に入れた王族が近々神殿まで様子を見に来ると、王城の使者から便りがもたらされ、あぁ、やっと夢に見た私の異世界ライフが始まると、きゃっきゃうふふ♡と喜んだ数日後。

さぁ、久しぶりに王族とのご対面と神殿の広間へ足取り軽く、なんならスキップしちゃう♡と浮かれっぷりで向かい、広間の扉を抜け正面に光り輝くステンドグラスを背に立つ王族と神官長の前へと歩みを進め少し手前で立ち止まり挨拶をしようとした途端、ステンドグラス辺りが急に眩しく黄金に光を放ちはじめ咄嗟に腕で目を覆う。


 少しずつ光が収まる中、頭の中へ直接響くように、「皆の者、この少女こそが真の異世界からの聖女である。この少女が居る限り、この国は安泰であろう」と声がした。




 光が収まり浮ついた意識が戻ったときには、ステンドグラスあたりからゆっくり落ちてくる少女をお姫様抱っこで受け止める王太子がいて。王太子の腕の中で目覚めた少女は雪のように白い肌に濡羽色の長い髪をしていて、閉ざされた瞳がゆっくり開かれると吸い込まれるような黒目がちの瞳が現れた。

王太子が少女へ名前を聞くと『阿部万梨阿…です。』と、儚げな声が紡いだ。




 そこからは早かった。私の存在は目に留まらなかったようで、少女を抱えた王太子はじめ王族、神官長が広間から出て行ってしまったので予定が無くなった私は日常業務へと戻ることにした。その晩には異世界から新たな聖女が現れたこと、私の失敗からすぐ測られた聖女の能力はなんと歴代で一番だったことなどが知れ渡り、私の存在が新しい聖女様に良からぬ影響を与えかねんと、王都への立ち入り禁止令と明日、地方の教会へ強制送還される事が決まった。




 …神様、あんまりではないですか。阿部万梨阿って、アヴェ・マリア様と同じ名前だからって選んだでしょ、安易すぎ、まんますぎ!!というかチート能力つけられるなら、私の時はなんで付けてくれなかったんですかーーーーっ!!!

 





―――――――――――――――――――――――――






 翌日、私の心とは裏腹に晴れ渡った空の下身一つで古いガタのきた馬車に放り込まれドナドナされるなか、強い決意をした。





 ――――――――神だろうが何だろうが、理不尽許すまじ。ボコボコに…、はできなくても一発殴ってやる!!





 この物語は、元凶を生み出した神様を一発殴ると決めた少しおつむが弱い少女と、それに巻き込まれた流されやすい気弱な地方教会の見習い神官と、一発殴られ目覚めてしまった残念神様のお話し。







 


 駄作に最後までお付き合い下さりありがとございました!



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