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15 再会のために

「で、格好つけてお別れしたので会いに行きづらいと。……私とお別れしてから随分青春してたようですね」


柔らかい雲のような床に座ってくすくすと笑うのは真っ白いワンピースを纏った少女だ。


「う、うるせぇよっ!青春とかいうな!」


少女を目の前にして俺はつい悪態をついてしまう。

この少女は俺が守れなくて死なせてしまった聖女だ。肉体を失った今では天の国で神様に仕えているらしい。

天の国に入った事で神様から直接、ホーリエという名をもらったのだとか。


なぜ俺がこの元聖女――ホーリエと呑気に話しているかと言えば俺が天の国にいるからだ。

しかも天使として。


あの時、悪魔として死を迎えた俺は気がつけば天の国にいた。

そこで元聖女であるホーリエと再会し、神様の元に案内された。


悪魔である俺が自分の命を犠牲にして聖女を守ったことにより、神様が俺を助けられる条件が揃ったらしく悪魔の体が死を迎えた直後に天の国へ引き上げたのだとか。

そして悪魔であった時の罪を清算するため、それ以上の善行を行うことで天使として新たに生まれ変わる許可を与えてくれた。


罪を償うのはけして楽ではなかった。

そして天の国には時間という概念がないため、罪の清算が終わるまで俺はひたすらに神様の為人の為に尽くし続けた。

それは一瞬だったかもしれないし、数百年の出来事だったようにも思える。


ようやく天使として生まれ変わることができた俺は聖女に再会する事を許可された。

彼女が気になって仕方ないという気持ちを見透かされたのかもしれない。

許可されたのになかなか会いに行こうとしない俺に、ホーリエがなぜ会いに行かないのかと尋ねてきたので聖女との話を聞かせたところホーリエは冒頭の様に述べて笑い出したのだ。


「当たって砕けて来ればいいと思います。フラれたらお姉さんが慰めてあげますから」


えへん、と胸を張るホーリエも俺といた頃に比べ大分変わった気がする。


「ちょっと待て、どっちかというとお前の方が妹だろ?」

「姉です!」


家族のように思ってくれているのはとても嬉しいが、彼女はどうしても俺を弟にしたいらしい。


「いいからさっさと行って来なさい!ちゃんとお姉さんが見守っててあげますから!」


地上に続く道に向かって背中をぐいぐいと押される。

本当に弟にでもなった気分だ。



……でも、悪くない……



聖女に会ったらなんて言おうか。

驚かれるだろうか、そもそも俺に気が付いてくれるのだろうか。

地上ではあれからどれくらいたっているのだろう?ホーリエから聖女が亡くなったという話しは聞いてないし、まだ生きているはずだ。

もしかしたらよぼよぼの老婆になっているかもしれない。


そうだとしても……俺の気持ちは変わらないだろう。


再会に少し不安を抱えながら俺は地上に向かう道を進み始めた。


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