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14 聖女と悪魔の別れ

散々マリサの体を啄んだカラスはやがて飽きたように飛び立って行く。


「待て!」


こいつを逃がせばまた同じ様なことが起きる。それは阻止しなければそう思いカラスに注意を向けてくる俺は気が付かなかった。

司教の体を盾にして生き延びたシスターコレットがナイフを構えこちらに向かってくることに。


「悪魔さん!!」


俺が気が付くより早く聖女がコレットと俺の間に体を割り込ませる。


「死ね、死ね聖女っ……!」


聖女越しに何度も恨みを含んだ声とドンッドンッという衝撃が伝わる。


「お前が……居なくなれば、私が聖女……に……」


叫ぶ声が次第に声が小さくなると共に、足元にさらさらと灰が落ちていく。

司教の体を盾にしても無事では済まなかったようだ。

コレットが完全に灰になって消えると同時にナイフがカランと床に落ち、聖女がどさりと崩れ落ちた。


「聖女……!!」


慌てて抱き抱えると、聖女の魂が宿る俺の体がみるみるうちに変化していく。

俺を庇った事が善行扱いになったようで、悪魔らしい角や羽は浄化され消えている。肌も白くなっておりもはや別人のようだ。

このままではコレットに受けた傷で死ぬか、浄化されて消えてしまう。


その前に何とかしなくてはと焦りながらも俺は解決出来るかもしれないひとつの方法を思い付く。


「……聖女、今助けてやるから」


今にも呼吸が止まってしまいそうな彼女にそう告げ地面に落ちたナイフを手に取る。

そしてその切っ先を自分に向けた。


「神様、聖女をどうか……助けてください」


悪魔の言葉を神様が聞いてくれるとは思えない。それでも呟かずに入られなかった。

聖女に危機が訪れたとき、『神様の加護』は必ずといっていいほど発動していた。

それが魂の危機だけでなく体の危機にも発動するのなら。


俺は自分目掛けて思いきりナイフを振り下ろす。

その瞬間、空が眩しい程に光ってナイフが当たる直前で何かに弾かれた。

あまりの光に驚いて目を閉じたが次に目を開けると、目の前には唖然として目を見開く聖女がいる。


どうらや無事に戻れたみたいだな……。


神様は悪魔の言葉でも誰を助けたいという理由なら聞いてくれるらしい。

これなら消えるか死ぬのは俺だ。

聖女はこれからも生きていける。


「……私、元に戻って……?」


自分の体に戻れていることに気が付いたのか聖女は目を瞬かせている。


「ようやく……戻れたみてぇだな……」


コレットに刺された傷のせいで喋るのが精一杯だ。


「悪魔さん!?なぜ……もとに戻らなければあなたは死なずにすんだのに!」


今にも死にそうな俺を見て、聖女は叫ぶ。


「前に……言ったろ、聖女の体で一生生きるなんて……ごめんなんだよ……」


もそろそろ喋ることも出来なくなりそうだ。

だけど、その前に伝えたたい。


「だからって!死んじゃうなんて駄目ですっ!」


ついにボロボロと泣き出した聖女の頭を撫でてやりたいのに腕はもう上がらない。

一度くらい撫でてやればよかった。

抱き締めてやればよかった。


後悔しないように生きるって、案外難しいもんだな……。


「聖女……お前は、生きろ……シスターにも、言われたんだろ……?俺からも……言うぞ。お前は、最後まで生きろ……約束だ」

「っ……」


聖女は唇を噛みしめ、ボタボタと落ちる涙を拭うと眉を下げながら笑う。


「約束します。私は最後まで、生きる事を諦めません。だからっ……悪魔さんも死なないで……っ」


抱き抱えられている腕に力がこもる。

俺なんかのためにこんなに泣いてくれるのが、こいつでよかったと思う。


「ありがと、な」


その言葉を最後に俺の意識は深い闇の中に落ちていった。


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