間の抜けた悲鳴
回転扉の先にを抜けた所で[STAFF ROOM]の文字が書かれていた
『もしかしたらここなら何か服があるかも知れない』
そう、自分はこの時まだオウビに借りたコートを一枚羽織っているだけなんだ
「そうなの?ここって衣服室なんだ?」
『いや、正確には違うんだが着替えるって意味ならそんな所だな』
「ふ〜ん、変なことばっかり覚えてるんだね?」
『あー、言われてればそうだな』
そういうと彼女はじっと自分の顔を見つめていた
(確かに記憶喪失のハズの男が変な事ばかり言えば疑われもするか)
「疑ったりしないよ」
『えっ!?』(心を読まれた?)
「だってネム顔に出てるんだもん、誰だって解るよ」
微笑みながら彼女が言う
自分ってそんなに顔に出るのか
「顔にも声にもでるのだ!」
彼女が悪戯っ子みたいに少し声のトーンを上げて笑いながら話す
声にも出てたみたいで恥ずかしい
さて話している間にスタッフルームに到着した
スタッフルームは中央にテーブルがあり両サイドには更衣室がある構造みたいだ
『取り敢えず隣の男子更衣室から探してみようか』
更衣室は扉が外れてしまっているから簡単にはいれる問題はロッカーの鍵だ
『ロッカーの鍵は……良し開いてる、オウビは反対側から片っ端にロッカー…縦長の箱を開けて着れそうな服を探してきてくれ』
「うん、分かった、この縦長の箱の中から服を探すんだね」
十分後、全ては開かなったが大体のロッカーの中は確認が出来た
集まったのはジャージ、白衣、作業服、スーツ等だ
『取り敢えずは脱出までだし動きやすさ重視でと』
ジャージに着替えてロッカーから身繕ってきたリュックに上着代わりに白衣やナイフやライター等をいれる
『そうだ、オウビこの上着返さないとな』
「えっ、いや、いーよ、ネムがキててよ」
『でも、オウビも冷えるんじゃないか?』
「いーよいーよ、私は気にしなくて」オウビの顔が少し赤い気がする
『まさか風邪でも引いたんじゃ』
「ちっ、違うから、その……」
オウビがモゴモゴと何か云いづらそうに俯向く
「だって、その、裸で」
小さな声でそう言うとオウビはそっぽ向いてしまった
『あぁ、そうだなすまん、洗濯してから返すよ』
自分のデリカシーの無さを呪う
スタッフルームで昼食を摂る事にした
「お昼はく〜ぶ〜いちり〜」
楽しそうにオウビが料理を出してくれる
「ごめんね、ホントはもっといっぱい食べさせて上げたいんだけど……」申し訳無さそうに言うオウビ
『自分の性だよな、す』
「そんな事ない」
謝ろうとした言葉はオウビの言葉に遮られた
「さぁ、食べたら次へいこぅ」
『分かった』
これ以上彼女を追い詰めたくないし、この先にからなにか食料があるかも知れない
さらに通路を進んだ先でエレベーターホールがあり三期のエレベーターがあったが
『エレベーターは動かないのか、ここは電気が通ってないのか』
そう、ここまでは電気で動いてる物も多くあったんだ
だけどエレベーターには電気が来てない
「お〜い、ネム〜こっちこっち」オウビが一番奥のエレベーター前で呼んでる
『動くのか?』
まさか一番奥だけどは動くのかと期待に胸を膨らませオウビへ駆け寄る
『っ』言葉になら無い悲鳴を上げた
エレベーターの扉が開いて奈落が覗き込む
「ホラ、行くよ〜」
そういうとオウビは自分をいきなり背負ったのだ
『ちょ、お、行くってまさか!?』
「危ないからしっかり捕まってるだよ〜」
『うわぁぁぁ』
間の抜けた自分の悲鳴がこだまする