弱者と呼ばれて帝国を追放されたら、マジックアイテム作り放題~の感想
たまには追放する側の視点から物語を追おうと思い、本作を選びました。
ドルガリア帝国の貴族、バルガ・リーガスはある日息子を他国への人質として出すことを決定しました。
主人公である息子は実家から離れ、帝国の文官として仕事をしていました。彼は書類仕事やアイテムの修理などをしており、特に大きな仕事の失敗はしていないとのこと。
では何故人質に出されるのか。バルガ曰く
帝国は強い奴が偉い。お前は戦うためのスキルを持ってないからいらない。
まーたいつものかと思われるでしょうが、彼を非難してはいけません。帝国全体がそんな感じらしいですから。
人質に出される先は魔王領。帝国の長年の因縁のある、まさに天敵と呼ぶべき相手でした。
ここで「え?人質って裏切らないことを示すために服従先に送るものじゃないの?」と思われた方がいるでしょう。
まさにその通りで、作中でも人質の後に生贄と言い直しています。
「え?生贄って神への供物とか、そういう時に生贄っていうんじゃないの?」と思われた方もいるでしょう。
これもその通りで、血に飢えた魔王軍に生贄を与えればなだめられるから送るそうです。
「戦えない奴は不要!」的な感じでイキっていますが、結局魔王軍と戦うのを避けたいだけのチキンであることが読み取れますね。
(まあ、彼が魔族と戦うことはないのですが。)
追放後、バルガは宮廷から魔法剣の修理について問い合わせを受けます。皇女殿下が使われる魔法剣、その修理を役所を通じて錬金術師に依頼していたそうです。
そんな大事な仕事を受けている錬金術師ですが、戦えないから帝国内での地位は低いそうです。
ただ武力のみを重視して補給のことを考えない……項羽かな?いや項羽は人間離れした力を持っているので、生贄を差し出して戦いを避ける口だけビビり野郎と比べるのはさすがに失礼ですね。
実はいままで主人公が修理を行っていたのですが、追放してしまった上帝国内の錬金術師で修理できる者が居ないそうです。
昔はできたそうですが、錬金術師の地位の低下とともに技術が失われたそうで、バルガが訪ねた錬金術師も修復した人に教えを請いたいそうです。
スキルという形でいきなり技術が降ってわいてくる世界で、いったいなにを学ぶことがあるというのかわかりませんが、この話は置いておきましょう。
完全な修理ができないとしても、儀式用の剣だから見た目だけ直っていればいいと見せかけの修復を依頼するバルガ。
儀式用のわりにやたら面倒な剣を使用するのか、そんな疑問は作者の都合により一切浮かび上がらず、しっぺ返しを受けることになります。
皇女はその剣で魔獣の討伐に行き、戦闘中に剣が砕けて死にかけました。
「修理をした錬金術師は極刑かな?」と思いきや、バルガの指示でやったという証拠をみた皇女はバルガに責任を問いました。
てっきり帝国の気質からして錬金術師が犠牲になるのかと思いましたが、なかなか理性的な判断で帝国がただの脳筋集団でないことが分かりました。
この小説の冒頭の方で帝国全体がそんな感じ(脳筋集団)だと書かれていたんですが、追放したバルガだけなんかおかしいですね。なんでだろなー(棒)。
その後のバルガは、持ち前の戦闘力でなく交渉で魔族の土地にある銀を手に入れようとしますが、魔族側の事情を全く知らないため交渉は大失敗。主人公を持ち上げる為にとことん愚かにされていますが、追放物特有のサンドバッグですから、まあこんなものではないでしょうか。
サンドバッグのわりにほぼ主人公関係なく自滅しているのはここだけの話ですが。