おっさん勇者の劣等生!~の感想
皆さんは常識とはどのようなものと考えているでしょうか。
朝起きて夜眠る、太陽は東から登り西に沈む、夏は昼が長く冬は短いなど。
しかしこれらは場所や環境により異なることがあるでしょう。
夜勤をすれば夜中起きていることになりますし、地域によっては白夜により太陽が沈まないということが起きるでしょう。
しかし、そのような例外が存在しても上記の知識に対し非常識とは呼ばれないでしょう。
常識というのは正しいかというより、世間の一般的な感覚と同調している状態を示しているからです。
では、常識がないとはどういうことでしょうか?
本作の主人公は9歳から30年間勇者として戦い、その間身の回りの雑務はすべて従者がやってきた常識知らずを自称しています。
なろう小説の常識のように勇者を解任された彼は、魔物討伐以外の働き方を知りません。
そのためどの職に就き、生きていこうかというプロットが全くできていませんでした。
まあ、当然のように冒険者ギルドがあるんですが、勇者辞めるまで一度も利用したことがなかったそうです。
利用したことがなくても、自分の知らない建物がどのような役割を担っているのか知りたいと思わなかったのでしょうか。
それも魔物の討伐という自分の生き方に十分共通した役割も持っているのに。
思考を制御されるような奴隷の鎖もされていないのに、自分の身の回りのものに一切興味を持たないという、常識がないどころか人として大切なものが生まれたころからないような気がするのですが、どうせ「俺何かやっちゃいました」がやりたいだけでしょうから気にしないことにしましょう。
冒険者ギルドの話を進める前に、勇者を解任された主人公はその後どうしたのかという話をしましょう。
彼は自称ぱっとしない勇者のため、信用できる人物を知らず身の振り方に悩んでいました。
そんな彼が絶対信頼できる、裏切らない人物を思いつきました。
なろう読者の方はご存じですよね。
はい、奴隷ですね。
そんなわけでコンビニエンスストアと同じ頻度で見かける奴隷商館を訪れたのでした。
奴隷商人に常識を持った奴隷が欲しいと要望する主人公。
その際年齢性別は問わないと付け加えましたが、どうせ男を紹介されることはないんだろうと思われるでしょう。
実際そうなんですが。
五人紹介されましたが、その中の一人は意外なことに老婆でした。
その老婆は条件奴隷といい、自分から奴隷になったから労働時間や仕事内容、福利厚生などの条件を出せ、主人が条件に合わないことをさせると主人が罰せられるという立場でした。
いったいどこが奴隷なのでしょうか。
普通奴隷と言ったら本人の意思にかかわらず強制労働をさせられる立場の人なんですが、常識がないのは主人公よりも作者ではないでしょうか。
「条件奴隷」だから現実の奴隷とは違う!と思われる方もいるでしょうが、例えばいくら作中で「この世界では食べ物のことをうんこ、食事のことを排便といいます」とルール付けしたところで読者は不快感を覚えるほかないでしょう。
そもそも自分から奴隷になるという言葉の解釈が曖昧で、紹介された奴隷の中には経営破綻したために身売りした人がいるんですが、その人は殺害や暴行以外何をしてもいい無条件奴隷にされています。
ちなみに主人公はその奴隷の胸を見て、この体に触ってもいいのか……と逡巡します(田舎中年はスケベなことしか考えないのか。)
で、手持ちが足りない中、誰を買おうか悩んだ末あることを思いつきました。
老婆を10分間雇い、奴隷商人に値下げしてもらおうというものでした(そのための老婆、そのための条件奴隷)。
主人公と違い、長年の経験豊富な老婆はどのような弁舌をふるうのでしょうか。
曰く、この娘は孤児院を経営していた。だから冒険者なんかしている暇はないだろう!
曰く、この娘が冒険者に向いているのなら、孤児院の経営のためにダンジョンに潜っていたはずだ!
ああ、やっぱりだめでした。
常識のない主人公、それを生み出した常識のない作者から生まれた弁の立つ人物は、平気で矛盾を口にし説破した気でいる精神異常者でしかありませんでした。
その後主人公は老婆の弁舌(笑)により値下げされた人を購入。
彼女のしなやかな白い手に入れ墨のような隷属紋が刻まれましたが、主人公は少しもったいないなと思う程度でした。
常識がないから人の気持なんか考える必要がないだろうと思っている主人公は、その後冒険者ギルドへと向かうのでした。
冒険者ギルドに入ると、主人公は古参の冒険者に絡まれました。
どうやら冒険者は主人公のことを新入りだと思っているようですが、主人公は王の命令で長年魔物退治に奔走しており、先ほどの奴隷商人も顔を知っている有名人です。
このことから、おそらく彼は主人公を持ち上げる為に、主人公が冒険者ギルドに入る五分ほど前に冒険者ギルドに生誕したと思われます。
その後は冒険者ギルドお馴染みの魔力を測定する水晶を破壊したり、奴隷落ちした女性に対しその日のうちに性欲を爆発させるなど見どころがないどころか気分が悪くなる展開のため、続きは読者の皆さんの目で確かめてもらいたいと思います。
主人公は成長どころか常識を身に着けることはないと思いますが。