一瞬で治療していたのに、何もしてないとパーティを追放された天才治癒師~の感想
主人公のゼノスはパーティリーダーのアストンに追放されます。
まあいつものですが、この小説はパーティ名が1話で出てこないんですね。
どうせ崩壊する組織の名前なんかどうでもいいだろうという作者の気遣いが感じられますね。
アストン曰く、ゼノスは何もしていないから追放するとのこと。
それに対しゼノスは、仲間が傷を負うと即座に治癒したり、いろいろサポートしていたと説明します。
ところでリーダーのアストンという男は、追放物特有の作者がこれ見よがしに設置したサンドバッグであり、人間的にかなり問題のある男であることが読み進めると明らかになるのですが、ゼノスの説明に対し「なら本当かどうか試してやるよ!」的な勢いでゼノスに斬りかかるといったことはしませんでした。
そんなことをしたらゼノスの言ったことが本当の事とわかってしまい、ざまあ成分の欠乏症により読者が発狂することが目に見えているのでこのような展開になったのでしょう。
ゼノスは追放を宣告され、今まで仲間だと思っていたメンバーから裏切られショックを受けました。
ちなみにゼノスはメンバーの中で唯一貧民街出身であり、一人だけ食事や報酬が少なかったり、野宿をさせられたようです。
そんな待遇をしてくる奴らを仲間と認識していたとは、お人よしを通り越してもはや奴隷根性というほかありませんね。
追放された後、ゼノスは治療スキルを利用して闇ヒーラー、要するに闇医者になることを決意します。
ヒーラーとして正式に活動するためにはライセンスが必要らしいですが、それがどのようにすれば取得できるかというのは一切語られません。
まあどうせ貧民街出身者はどうあがいても取得できませんと後付けの設定が出されるでしょう。考えるだけ無駄です。
そしてテンプレのように奴隷にされた瀕死のエルフの少女を治療します。
いきなり何言ってんだと思われるでしょうが、原作もこんな感じでいきなり登場するのでおあいこです。
助けた少女の処遇に関して、ゼノスが引き取ることになりました。
協会に預けるには紹介が必要だの、孤児院は人身売買の温床だからダメだの、ハーレム要因を手元に置いておくための設定には余念がないのは気持ち悪いとしか言えません。
貧民街で活動を開始しますが、そこでは三つの勢力がしのぎを削っています。
リザードマン、オーク、ワーウルフ。
三勢力に恩を売ったゼノスは成り上がる……といった内容なのですが……
ぶっちゃけここからキャラに魅力がなくなるので見るのはお勧めできません。
三勢力の長はいずれも女性。で、なろう特有の「助けたのだから惚れるのは当然でしょう?」と言わんばかりに主人公に好意を向けます。気持ち悪くてこの上ありません。
さらにリザードマンを治療したことを耳にしたワーウルフは「お前を殺せばリザードマンを治療するやつがいなくなる」と言って主人公を殺そうとします。
普通ならなろう特有の『過剰防衛と呼称するには生ぬるい報復』をするところですが、将来のハーレム要因であることが作者によって決定されているため、特にひどい目にはあいませんでした。
話が脱線しましたが、せめてリザードマンの治療をせず、ワーウルフの配下になれと一言警告しておけば良かったのではないのでしょうが。
無警告でいきなり殺そうとする乱暴な性格のどこに魅力があるというのでしょうかね。
その後、長い間互いに憎しみあっていた三勢力はゼノスによって和解することとなります。
いったいどうやったのでしょうか。
三勢力が総力戦をし、互いに殺しあっているところにヒールをかけ、いつまでも終わらない戦いの馬鹿馬鹿しさを説いたからだそうです。
それで殴り合いをした三勢力は抗争をやめましたとさ。
ええ、随分と薄い因縁ですね。暴走族の対立より浅いのではないでしょうか。
三勢力が和解したという話は王都まで流れ、それにより新たな懸念が生まれました。
貧民街で抗争していた三勢力が王族に牙をむく可能性がある。
そのことを危惧し、和解の中心となったものを捜索するために近衛騎士が派遣されました。
近衛というのは基本的に王族などの権力者の警護に当たるものなのですが、なろう小説の作者にそんな知識など期待するだけ無駄だということが分かりますね。
で、この近衛騎士はゼノスが連れているエルフの少女を見るや否やゼノスに発砲します。
理由は、二人とも種族が違うから血縁関係ではない。だから誘拐したのだろう、と。
普通近衛兵というのはエリートがなるものですが、やはりなろう小説の作者に常識を求めても無駄だということが分かりますね。
ここで問題です。
この騎士がなろう主人公に危害を加えようとしたのに報復されませんでした。
いったいなぜでしょう?
正解はハーレム要員だから、でした。愚問ですね。
ちなみにこのキャラ、完璧主義を目指すのには深い理由があって……みたいな書き方をされています。
もうちょっと理知的な行動をすれば説得力があるのですが、なろう小説だからね、仕方ないね。
その後、なんやかんやあって人身売買をしていたお偉いさんと対峙するのですが、銃で撃たれたことで『撃ち返して良い』権利を手に入れたが如く、主人公は無抵抗の人間に発砲します。
女が主人公に発砲してもハーレム入りすれば問題なし。男が発砲したら容赦なく制裁されることが確定した場面です。
書籍化するらしいので、まあ、興味があったら読んでみたらいいんじゃないですかね。