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独立第八護衛群、出撃ス  作者: アナール学派
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第1話 転1号作戦

西暦2090年5月26日 横須賀海軍工廠 第8船渠


一人の男が出撃の為、最終調整を行っている軍艦の艦橋に佇んでいた。

「いよいよ………か。」


階級を見ると大将。

そう、この男こそが新にこの軍艦を旗艦として編成される特務艦隊の司令官である。


「これまで長い道のりだった………」

男は、人気の無い艦橋を歩きながら意識を過去へと飛ばした。


2070年に『北海の悲劇』『チャンセラーズビル事件』と呼ばれる軍事衝突が発生すると、世界は軍事的・政治的混乱に巻き込まれる事となった。


政治的に見れば、アメリゴ・ロリヤ両国の関係は修復不能なものとなり。

その余波は極東における政治的対立にまで発展した。

せめてもの救いはあまりの損害に『核兵器使用禁止条約』が締結された事だろう。


軍事的に見れば、それまでのイージスシステム及び巡洋艦に疑問が呈されるようになり、『核攻撃を受けても護衛任務を継続できる軍艦』が求められるようになった。

端的に言えば『盾』より『矛』の方が強い時代に逆行したのだ。


そして、急速な国際情勢の悪化に日本も他人事ではいられなくなった。

『日本』という国は外からの攻撃に対して酷く脆弱である。


海上交通を遮断されれば干され、本土には原発等の攻撃に弱い施設が存在し、人口密度も均一とは真逆だ。


その為、海防を担う日本海軍が2071年に復活した。

そして同時に防衛省は軍務省と名を変えている。


その4年後の2075年。日本海軍は『装甲戦列艦』という艦種を産み出した。


改良型核分裂機関を利用した生成させる大出力の電力を生かす電波妨害、前時代的ながら電波妨害の影響を受けない主砲、数度の核攻撃に屈しない強固な船体。

『装甲戦列艦』と呼ばれているものの、実質的には戦艦であった。


記念すべき最初の一隻は『大和』と名付けられ、同型艦の『武蔵』と共に新生日本海軍へと編入されたのである。

なお準同型艦の『信濃』は動く首相官邸として東京湾に係留され、海外訪問の他に有事の際、国家中枢の壊滅を防ぐ目的で使用されている。


その後の各国の動きは単純であった。

イギリスが弩級戦艦、ドレッドノートを健造した時のように『装甲戦列艦』を健造し始めたのだ。


そして日本はその10年後、新たなる機関。『核融合機関』を動力にした『装甲戦列艦』の健造を行う事になった。


『核融合機関』の利用により、更に余剰となった艦内スペースと電力は推進性能と継戦能力の強化へと回された。

この『第二世代装甲戦列艦』と呼ばれるようになる軍艦を日本は8隻も健造し、『第一世代艦』も8隻保有していた為に『八・八艦隊』と呼ばれるようになった。


しかし、この無制限とも言える日本の軍拡を誰も咎めはしなかった。

何故ならば、戦争の足音がすぐ側まで迫って来ていたからだ。


運命の日は西暦2088年7月23日だった。

南沙諸島沖においてアメリゴ海軍第七艦隊所属の第一世代装甲戦列艦『ロバート・E・リー』と中洋民族共和国所属の海防戦列艦『経遠』が砲火を交えた事を機に第三次世界大戦が始まったのである。


日本は当初戦火に巻き込まれていなかったが、2089年の石垣島侵攻により一変。

『石垣島沖海戦』が発生した。


この海戦において、日本は装甲戦列艦を用いて上陸した軍を駆逐する事に成功し中洋民族軍に手痛い打撃を与えた。


しかし、これが悲劇を招いてしまう。

2089年11月、中洋は『核兵器使用禁止条約』を破棄して日本に対する全面核攻撃を開始。

日本は装甲戦列艦の全てを用いて迎撃する。

迎撃は成功したものの、半数以上の戦列艦を日本は失う事となってしまい。日本近辺の海洋が汚染された事による健康被害も多発してしまう。


この損害と、全世界の核戦争の始まりをひしひしと感じていた日本国首相、有栖川平八はある計画を秘密裏に進める事になるのである。


「平八?……これで本当に上手くいくんだよな?」

意識は再び浮上し、誰も居ない艦橋にて亡き友へと問う。


この男、日本国海軍第八艦隊司令兼旗艦『開陽』艦長。

九条輝久大将と前日本国首相、有栖川平八は友人であった。


しかし、有栖川平八は去る3月21日に暗殺され、犯人は現在も捜査中だ。


「救えなかった人も救えるんだよな?……」

しかし、無人の艦橋には答える者など居ない。

………かに思われた。


気温が下がる

ひんやりとした冷気を首筋に感じる


「司令、それは分からない。でも大丈夫」

そして扉のロックが解除される音すら聞こえず。

唐突に、後ろの何もない空間に『それ』は出現した。


「白菊?……」

輝久が振り返ると、銀色の髪をストレートにした金色の瞳の少女が第一種軍装を身に纏って立っていた。


「彼の人となりは私の『艦霊機』でも把握している。彼は勝算の無い計画は立てない。」


断言する少女は言動から分かるように人ならざる存在。

装甲戦列艦『開陽』の艦霊(ふなだま)とも言うべき存在である。


艦霊(ふなだま)とは

船本体に宿る精霊であり本来であれば、船に乗る人々の精神力によって顕現する。


故に大型艦でなければ人型で具現化出来ずに、出来たとしても限られた者にしかその姿を視認できない。


その姿を視認可能にしたのが『88式艦霊顕現機』略して『艦霊機』と呼ばれるものである。


ーーー艦のことは艦霊に聞けば良い


そのようなコンセプトで開発された艦霊機は艦自体のメインコンピュータと一体化されており、艦霊独自による艦のコントロールも可能だ。


「ああ、俺もそうおもう……だからこそ『転一号作戦』は成功させなければならない」


『転一号作戦』

核戦争による世界の終末が間近に迫る中、一縷の望みを賭けて行われる作戦である。


亡き首相、有栖川平八が強力にプッシュし俺が実行する。


『90式空間圧縮型転移装置バニシング・コンプレッサー』と小笠原沖の日本海溝において発見された希少鉱石を用いて時を越えて未来を変える作戦だ。


目標は1942年6月の日本

太平洋戦争の結末を変えて、核兵器の開発を止める。


副次目標として中洋の共産化を抑止する。


転移のチャンスは一度きり。

計算によれば次の皆既月食


…………つまり今日だ


未来の為にも絶対に失敗は許されなかった。

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