05:ビーツ・ボーエンという少年
極端に短いので、ここまでを初日投稿とします。
次回からは書き溜めが尽きるまで、毎日9時投稿します。
ビーツ・ボーエンは転生者である。
二八歳で日本の地を去り、気がつけば剣と魔法の世界で産声を上げていた。
別に神様に会ったわけでもなく、使命を帯びることもなく、なぜ異世界に転生したのか分からないまま成長していった。
しかしこの世界が剣と魔法と魔物の世界だと分かったビーツは「リアルモンスター!?見たい!」と剣にも魔法にも大して興味を示さずに、魔物に関心を寄せていった。
元から日本のサブカルチャーにどっぷり漬かっていたビーツは、無類のモンスターマニアでもあった。
「ゴブリンとか出てくるのか?」とか「スライムの形状は?最弱?それとも無限進化?」など興味は尽きない。
そのビーツからすれば、本物のモンスターが存在するこの世界は恐怖を抱くどころか歓喜する始末で、モンスターに会うために剣や魔法なども覚えようと、動機が他の人とは違う事など気にせず、乳幼児の身で努力を始めた。
最初の転機となったのは三歳の頃。
木こりの父に連れられて村のすぐ傍にある森に入った時、近寄ってきたシャドウスネークの幼体が、ビーツに襲いかかるわけでもなく、ビーツの影に入り込んだのだ。
驚き戸惑い対処に困るビーツに「がはは」と豪快に笑う父親は、村で「モンスターじいさん」と呼ばれていた魔物研究の権威を紹介し、それが魔物を統べる者【召喚士】としての第一歩となった。
ビーツと同じくモンスターマニアな「モンスターじいさん」によって、ビーツは魔物の知識や戦い方を知る事となる。
【召喚士】とはこの世界におけるテイマーや魔物使いといった職業で、使役した魔物を特殊な媒体で呼び出し共に戦わせる事が出来る者。
「モンスターじいさん」は召喚士でもあり魔物研究の第一人者でもあった。
次の転機は五歳の「神託の儀」。
この世界の人々は全員何かしらの魔法適正を持っている。
火風水土光闇の六属性のどれか、または複数の適正を持ち、その素養がどの程度あるかで魔法をいかに使えるのかが決まる。
適正と素養レベルを調べ、神託により将来の道筋を占うのが五歳時に行う「神託の儀」だ。
ビーツは闇属性の素養が極めて高く、土属性と水属性にも素養があった。
三属性持ちというのはかなり珍しい部類であり、通常は一つか二つである。
神官が執り行うその儀式にて、その年、村で五歳となった四人の子供が集められたが、四人ともに同じ日に産まれた子だと知った。
ビーツは「珍しいこともあるもんだな」と楽観していたが、そうは思わない子供もいた。
儀式の後に子供四人で集まった際に、一人の子供が聞いたのだ。
「で、お前ら西暦何年生まれ?」と。
そこで四人全員が日本からの転生者だと知る。
前世での接点など日本出身というくらいしかなく、死亡した日時もずれており、神様に何か言われたという事もない。何の目的で転生したのか不明なままだと言う。
チートな能力を授かるわけでもなく、唯一チートと言えるのは、その時点で数体の従魔を従えていたビーツのテイマー能力だけじゃないかと結論付けた。
ビーツにとって幸運だったのは、他の三人がその能力を妬む事なく接してくれた事。
そして四人共に、この世界に前世の知識・技術をもって文明・文化を変える気がなかった事だ。
つまりは、なるべくこの世界の文化を大事にしつつ、自分たちだけで楽しむ分には前世の知識を利用しようという事である。
まぁ後にダンジョン【百鬼夜行】というやりすぎな文化破壊を起こすわけだが、その当時はという話しだ。
結局、この四人で冒険者パーティー【魔獣の聖刀】を組み、世界を巡ることになるのだが、英雄譚にもなっている魔族討伐を終え、英雄となり、その後何年もかけて大陸を一周し王都に帰ってきた時に、ビーツはダンジョンコアを所持していた。
増えに増えた従魔の居場所を確保するためにダンジョンを利用しようとしたのである。
そこからパーティーメンバーや冒険者ギルド、知り合いの王族との協議を重ね、ダンジョン【百鬼夜行】のオープンとなるのだが、それはまた別のお話である。