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50:そして四九階層――異変

00話の登場人物紹介を更新しました。



 一方で四九階層″ゴブリン王国″。

 【天馬の翼】の初到達から三か月以上が経つ現在、十一組のパーティーが攻略に挑んでいる。これは五〇階層″暗黒迷宮″に挑んでいる数よりも少ない。

 その理由の一つは、五〇階層の探索に時間が掛かっている事。そして、さんざん四九階層の探索風景をモニターに映した事で、挑む冒険者が予習できた事。例えば大体のルートであったり、重装備でなく軽装備にすべきだとか、この魔法を使ったほうがいいとか、そういった情報がまとまってきたのだ。


 そして五〇階層への突破者を多く出してきた要因として大きいのが、とある冒険者の活躍である。

 その冒険者が中ボスのゴブリンキングと戦う事が結構な頻度であり、そうなるとゴブリンキングも斥候や近衛兵に具体的な指示を出せず、その隙を見てボス部屋に直行する″抜け駆け″″横紙破り″が多く見られるようになった。

 これに対してその冒険者は″抜け駆け″″横紙破り″をマナー違反だとか攻めるような真似はしなかった。「わしゃ好きでキングと戦っとるんだし勝手にボス部屋行ったらいいじゃろ」と。


 そう、ベン爺こと【白爪】ベンルーファス前獣王陛下である。



 ベン爺は二~三日に一度か、酷い時は連日訪れることがあった。

 基本的に一人で、何回かに一回はレレリアと一緒だ。【混沌の饗宴】は解散したものの、二人パーティーという扱いで挑んでいる。

 ベン爺一人で来る場合であっても、王都南側の大通りでは知能の低いゴブリンたちをマラソンがてらに蹴散らして行き、北側の大通りに至ってはゴブリン騎士団が道を譲る有様である。

 これはゴブリンキングの指示で「どうせ戦っても死ぬだけだから素通りさせろ」と知能の高いゴブリンナイトやゴブリンジェネラルに通達している為である。王都南側のゴブリンたちは弱く知能が低い為、そういった指示はなしだ。



 この日はレレリアと二人で四九階層にやって来た。

 王都南の大通りに群がるゴブリンたちを薙ぎ払い進むと、まるでデートであるかのように王都北の大通りを歩く。ただ、彼らの道を開けるように列を成すゴブリン騎士団の群れと、歩いている二人が少女と老人なので、デートというよりは生贄か何かに赴く老人と孫といった格好だ。悲壮感は欠片もないのだが。



「なんかすっかりお客さんね」


「ゴブリン騎士団の中にも顔なじみが出来たぞい」



 そう言いながらベン爺は軽く手を上げ、ゴブリンジェネラルに挨拶していた。どうやらこの騎士団の隊長格らしい。普通、ゴブリンの顔など人間には見分けが付かないものだが、何度も足を運ぶことで、隊長格くらいは見分けがつくようになったのだ。

 やがて二人は一切の攻撃を受ける事も攻撃をする事もないまま、王城前広場へと到着する。ゴブリンキングの陣だ。



「おお、ベンルーファス殿。今日はレレリア嬢も一緒か」


「うむ。今日は従魔戦の日じゃな」


「そうか。では健闘を祈るぞ」



 ゴブリンキングとの気さくな会話。ベン爺は一人で来る際、ボス部屋には行かず、ひたすらゴブリンキングと模擬戦をしている。ベン爺にとっては自国でもなかなか居ないちょうどいい強さの練習相手であり、ゴブリンキングにとってもそれは同じだった。

 特にゴブリンキングは眷属召喚で生み出されてからずっと四九階層で指揮をとる立場であり、まともに剣の稽古をする事は出来なかった。たまに顔を出すシュテンに扱かれる事もあるが、シュテン相手では地力が違いすぎる。なのでベン爺という存在は渡りに船だったのだ。

 実際、ベン爺との稽古によりゴブリンキングの剣の腕は増している。他の冒険者にとっては迷惑この上ないが、模擬戦をしている隙にボス部屋に抜け駆けが許されているのでどっこいどっこいだろう。


 そんな経緯もあり、すっかり仲良しになった二人だが、模擬戦に集中しすぎると従魔戦に影響が出る。レレリアと二人で来る時はレレリアご所望の従魔メダルが目当てなので、ゴブリンキングもスルーというわけだ。



 そして難なくボス部屋へと足を踏み入れる。

 フェリクスも居た最初のガシャ戦も入れ、これで通算十一回目となる。戦績は十勝〇敗。

 レレリアが集めた従魔メダルは九種類となっている。デュアルホーンラビットのイナバが二回出て来た為、イナバメダルは二枚ある。

 余談だが大商人ゲイツが「余ったイナバメダルを売ってくれ」と言ってきたが当然のように断った。他の商人や貴族が言い寄っても一蹴である。アダマンタイト級のレレリアが金に靡く事はない。むしろダブりだろうが何枚でも欲しいくらいに素晴らしい細工品だと夜な夜な愛でている。



「頼むわよ、ベン爺!出来れば戦った事のないヤツで!」


「無茶を言うでないわ。こんなの運じゃろう」



 そう言いながら、手慣れたようにパネルを操作する。

 人数は二人。そして、スタートからのストップ。あまり間を置かずにタップした。


 従魔スロットが回転速度を緩め、やがてゆっくり止まる。

 ガシャが出て来た時は、白背景に髑髏の絵だった。イナバの時は白背景に兎の絵だった。




 ……しかし今回は″銀″の背景に″白い長髪の女性の顔″の絵だった。



「「あ……」」



 ベン爺とレレリアが口を大きく開け、目を見開く。

 パンパカパ~ン!

 不似合なファンファーレがボス部屋に鳴り響くのを、二人は時が止まったような表情で聞いた。



「あああああああ!!!」



 レレリアが距離をとる事もせず、膝と両手を地面につけて項垂れる。



「おおおおおおお!!!」



 対照的にベン爺が咆哮を上げ、距離をとり、姿勢を低く構えた。


 やがてファンファーレの鳴り終わりと共に転移の光がボス部屋に輝く。

 その中から現れたのは服も髪も肌も全てが白い、まさに″白の貴婦人″。

 唯一困ったような眼差しをベン爺に向けるその瞳は赤い。

 左手を頬にあて「あらあらあら」と言うその姿は戦闘が始まろうという構えではない。



 従魔ナンバー四番。

 蛇軍副長。


 ――アラクネのジョロである。




後から気付いたけど49話で50階層の話しをやって、50話で49階層の話しをする。

よく分かんねーなこれ。

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