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王都ダンジョン【百鬼夜行】へようこそ!  作者: 藤原キリオ
第三章 最高位冒険者たち
31/170

30:とある従魔の罠回避



「うわ、また避けたよ」


「どうやってんだ、あれ……」



 モニターを見つつ言葉を交わすのは友人同士である狩人のロビンと召喚士のクライスだ。

 画面には【混沌の饗宴】の三人が地下四〇階″石牢の迷宮″を探索している風景が映っている。


 ダンジョンの階層には屋外をイメージした草原型や森林型、街や村などを模したものなど様々あり、屋内をイメージしたものとしては洞窟型や鉱山、廃坑を模したものや、ダンジョン壁に囲われた迷宮型などがある。

 トラップはその特徴から屋内タイプの階層に多く見られ、落とし穴や吊天井、矢や毒霧が出てくるものなど枚挙に暇がないが、その起動方法や解除方法なども様々である。

 それを見つけ避ける、もしくは解除するのはダンジョン探索する上で必須であり、魔物の発見も合わせて斥候役の腕の見せ所と言えるだろう。



「やっぱあのマンティコアだよな」


「ああ、どうやってかトラップを見つけてフェリクスさんに教えてるんだ」



 全くトラップに掛からずに走破していく【混沌の饗宴】にそんな感想を持つのは彼らだけではなく、他の冒険者や一部の一般客も同様だった。

 もちろんトラップが記載された高級地図を利用している【混沌の饗宴】だったが、さすがにまだ四〇階層の詳細地図は売り出されていない。

 だとすれば、どうにかしてトラップを感知しているはずだが、と考え始めた観戦者たちの目に入ったのが、マンティコアのデイドだった。

 トラップの付近になると背中で寝ているフェリクスに何やら顔を向け念話をしている様子。そしてフェリクスがベン爺とレレリアに伝える。解除する場合はレレリアが率先して動いていた。



 そもそも斥候役とは何か。

 それは魔物や地形、罠など、周囲の危険を察知する為の存在であり、斥候役がいなければ常に強襲的に魔物に襲われ、突発的に罠に掛かってしまう。


 冒険者たちがギルドに登録している職業で言えば、斥候役の専門職は″狩人″である。(ちなみにこの世界に盗賊やスカウトといった職業はない。正しい意味での盗賊はいるが)

 それは五感に長け、探索・冒険する為の技術に優れた者。

 ロビンは幼い頃から狩人である父親の英才教育を受けてきた為に十歳にして有望な狩人である。ちなみに狩人に多く見られる主武器の弓矢を背負いながらも、彼の主武器は短剣であった。


 また、クライスのように狩人でなくとも斥候役を務めるケースは多い。

 彼は従魔のファングラットを先行させ目と鼻、耳で探りながらも自身の探索魔法で周囲の警戒を行うというスタイルである。

 同じように自らの五感や探索魔法が扱える者は、狩人という職業に縛られずとも斥候役として活躍している。極端な話、剣士や魔法使いの斥候役というのも結構いる。



 では探索魔法とは何か。

 それは闇属性の中級魔法″サーチ″というものであり、指定した方向の生物(ねずみ程の小動物以上の大きさでアンデッドは不可)を感知する魔法だ。

 個人差によって感知できる距離は異なるが、闇属性の素養さえあれば後は練習次第で使用できる。

 この世界の人間は火・水・風・土・光・闇の六属性の素養を最低でも一つは持っている為、パーティー内に闇属性の素養持ちがいれば″サーチ″は可能。

 だが魔法であるが故にずっと使い続けるわけにもいかず、感知する方向を指定する為に″穴″が出来るのが欠点でもあった。



 冒険者の斥候役にとって必要不可避の探索魔法″サーチ″。

 それをマンティコアのデイドが使っているのかと言うと、答えは否である。

 高位の魔物は遠くの気配を探ると言われているが、それは五感が人間のそれとは異なるとか(もちろん段違いなのだが)気配察知の術を持っているとか、そういうわけではなく、彼らは″生命探知″ではない″魔力探知″を行っているのだ。

 これにより″サーチ″より遠くの魔力を持つ全ての者(・・・・・・・・・)の動きや不自然な魔力の流れが分かる。


 ダンジョンのトラップ起動にはスイッチから罠本体まで導線のように魔力のパスが通っており、デイドは高位魔物特有の探知技術である魔力探知を使い、トラップ作動に使用している魔力を感知しているのだ。

 フェリクスはデイドが魔力を感知している事を知っているが、人間が使える技術ではないと早々に諦めている。面倒だっただけかもしれない。

 【百鬼夜行】で言えばオロチの得意分野であり、それを【魔獣の聖刀】の四人に教えた結果、ビーツを含めた四人ともが魔力探知できるようになったのだが、それはオロチという協力者に加え、転生者としての知識・イメージが作用した結果であって、人間としては極めて異例であり、全斥候役を驚愕させ基本を覆す技術であった為、魔力を探知する方法については四人だけで秘匿するようにしたという経緯がある。



「やっぱマンティコアの感覚ってスゴイって事じゃないか?」


「だよなー。さすが高位の魔物って言うか、俺たち斥候役が形無しだな」


「それを従魔にしているフェリクスさんがすごいよ」


「ああ、さすがはアダマンタイト級だな」



 クラウスの従魔のファングラットは魔力探知を使えない。

 魔力探知の存在を知らない観戦者の全ては、彼らと同じ結論になるのだ。

 マンティコアすごい、アダマンタイトすごい、と。まあ、実際すごいのだが。


 そして【混沌の饗宴】は順調にダンジョンを進み、この短期間で最前線に追いつこうとしていた。



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